円安の流れが止まらない。10月14日、円相場は一時1ドル=148円台まで値下がりし、19日には一時149円50銭付近を推移。いよいよ150円の大台がちらついてきている。1990年以来、実に32年ぶりの円安水準だが、それにともない輸入原材料価格が急上昇。私たちの身近な商品の値段もどんどん値上がりしている。それをなんとかカバーしようと最近、資産運用についてファイナンシャルプランナー(FP)に相談する人が非常に増えているという。円安への資産防衛の手段として有効なのはドル建て資産を保有することだ。まずは実例を紹介したい。
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東京近郊に暮らす50代の夫婦は14年前、約5万2400ドルの米国債(ゼロクーポン債)を証券会社で購入した。当時の為替レート、1ドル=105.31円を単純に当てはめると価格は約550万円。子どもの大学入試の時期に合わせて1千万円程度の教育資金を準備することが目的だった。
なぜ、米国債を選んだのか?
「教育資金なので株式のような価格の変動の大きな証券は買いたくなかった。その点、米国債ならまずデフォルト(債務不履行)のリスクがないので安心です。購入したら償還(払い戻し)までほうっておけばいい」
確かに株式と比べれば国債の値動きは安定しているが、為替変動のリスクがある。
「人口減少にともなって日本の経済が徐々に縮小していくことを考えれば、いずれは円安になると思いました。そうすれば、ドル建ての資産を持っていたほうが有利になる。もちろん、予想が外れて円高になるかもしれません。しかし、それは日本経済が堅調だということで、収入面を考えれば悪くない。要するに、円安と円高、どちらに振れても資産全体にあまり影響がないようにしたかったわけです」
購入した米国債は昨年、9万1000ドルで償還された。償還当時のレートで約966万円になったが、仮に1ドル=149円で計算すると約1356万円になる。それだけ円安の影響は大きいといえる。
教育資金は手持ちの円資産で十分まかなえたので、償還で得たドル資金で米トヨタの債券を購入し、現在もほったらかし運用を続けている。今度の目的は老後の生活資金だ。