がんなど手術の必要な病気の疑いがわかったとき、インターネットなどで病院探しをする人は多いだろう。しかし、日本プライマリ・ケア連合学会理事長で、医療法人北海道家庭医療学センター理事長の草場鉄周医師は、「まずはかかりつけ医に相談したほうがいい」と言う。かかりつけ医とはどのような医師のことなのかを探った前編に続いて、後編の今回はかかりつけ医に相談したほうがいい理由を聞いた。
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草場医師はかかりつけ医の役割を担うと期待される「家庭医」の養成に、長年力を入れてきた。自らも複数のクリニックで家庭医として従事している。
草場医師は、「重い病気が疑われたときこそ、かかりつけ医の力が発揮できる」と言う。
かかりつけ医に相談するメリットはどのようなものか。
まず、会社や地域の健康診断で、「要精密検査」の結果が出た場合だ。便潜血検査が陽性で「大腸がんの疑い」が指摘されるケースなどがある。
かかりつけ医では患者が相談に来た場合、まず、総合診療の視点から疑われる病気をあらためて確認する。
その上で、できる精密検査があればクリニックで実施する。できない場合は、他院に紹介状を書いて検査の依頼をするが、病気が確定した場合を考え、最初からその病気を専門とする病院や専門医に紹介するケースも多いという。
「あくまでも専門教育を受けた家庭医の立場からの対応になりますが、この『どこに紹介するか』がかかりつけ医の腕の見せ所の一つだと思います。間違ったところに紹介したらこちらの責任ですから、それはものすごく神経質になります」
紹介先の基準としては、第一に手術や治療の技術があること。病院のホームページで調べることも多いが、そこでは手術件数や治療数なども確認する。罹患数の少ない病気の場合は、候補と考える医師のことを関連する学会や論文などから調べる。専門性や腕を確認して決めるという。
「もちろん、患者さんがホームページやランキング本などでいい病院を探すことは否定しません。むしろ、そうであればぜひ、『この病院がいいと思うのですが、どうでしょう?』と相談していただければありがたい。『その病院は確かにいいから紹介しましょう』とGOサインを出せることも多いのです。一方、インターネットの口コミ情報やご友人からの情報の場合、医師から見て『ちょっと違うのではないか』と思うことがあるのです」