新型コロナの新規感染者数が落ち着き始めていたなか、岸田文雄首相は全数把握の見直しや水際対策の緩和など経済活動の再開に舵を切った。この冬に第8波の可能性を指摘する意見もあるが、岸田首相がどういった考えで方針を決めているのか。取材を進めると、政府分科会とは別に、コロナ対策に影響を与えているある人物が浮かび上がってきた。
【写真】尾身会長ではない。コロナ対策に影響を与えているある人物はこの人
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こうした行動緩和の理論的な支柱になっているのが「阿南ペーパー」と言われる提言書だ。まとめたのは、神奈川県医療危機対策統括官で、藤沢市民病院副院長の阿南英明氏。政府分科会の関係者によると、分科会のメンバーが相談する人物という。
提言の基本構想について、分科会メンバーの一人はこう説明する。
「2類・5類問題と結びつけられてしまうため、提言の中でこの表現は使われませんでしたが、阿南ペーパーの根本にあるのは、『コロナをインフル並みの病気として扱おう』ということです。コロナ患者を国の管理下に置かず、患者が自主的に療養し、街の病院で診察できる普通の病気として取り扱うということです」
そう言われる「阿南ペーパー」。ここには、どんなコロナ対策が描かれているのか。阿南氏がAERAdot.に語った。
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――岸田政権が新たに打ち出したコロナ政策は「阿南ペーパー」をもとにしているといわれています。阿南ペーパーとはなんでしょう?
たしかに政府は「阿南ペーパー」で描いた方向に舵を切っていますね。これは8月2日に分科会メンバーらの「有志」で公表した提言書「『感染拡大抑制の取り組み』と『柔軟かつ効率的な保健医療体制への移行』についての提言」です。
このペーパーの準備が始まったのは、今年5月。毎週日曜日に有志メンバーによって議論を重ねてきました。改定を重ね、公表するころには80バージョン(版)にもなってましたね。
――これまでの対策と何が違うのでしょうか。