――全数把握の見直しには国民や医療現場からも不安の声があがりました。
いまのコロナは感染しても多くの場合、症状が軽いです。医学的にはもう全員を監視下に置かなくてもいい病気になっています。普通の風邪と同じように体調が悪ければ、自分で病院にいくという社会のあり方に移れる状況です。ただ、いきなりこうすると、社会も混乱するので段階的に変わっていけばいい。今回の全数把握の見直しでは、若い人は監視下に置かなくなった一方で、何かあれば相談できる「健康フォローアップセンター」を設けることになりました。
――それによってどんな効果が期待できますか。
こうした体制にするだけで、医療機関の負担はかなり軽減できます。県では医療機関での診療をせずに、抗原検査キットや無料検査で陽性となったら療養が始められる「自主療養届出制度」というのを第6波のときから行っていました。この結果、第7波の新規患者の3割から4割はこの制度を使い、医療機関の逼迫(ひっぱく)を抑えることにつながる成果を出しています。
この3年間でコロナに感染していたら、全て医療機関を受診して行政の監視下に置かれ、10日間過ぎるまで管理されるという考えが国民に浸透してしまいました。しかし、先ほどお話したように、このウイルスの脅威の性質と度合いは変化しました。我々国民はもっと賢く自分や大切な人の健康と生活を自らコントロールできます。
最終的には、フォローアップセンターもいらなくなるでしょう。自らの状態をみて療養したり、具合が悪かったら社会のセーフティーネットとして医療機関や消防119番が使えたり、という今まで当たり前にやって来た社会を取り戻していけると思います。
今回の全数把握の見直しでは、高齢者は引き続き把握の対象になりました。ただ、ペーパーをまとめたときは、高齢者も監視下に置かなくてもいいという考えでした。高齢者もコロナで重症化する人は少数なんです。