新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長

 医師の診察では、マスクをすることが絶対的に重要なことで、防護服や手袋が常時必要なわけではないです。感染経路は、接触感染は非常にまれで、ほぼ気道からの感染です。エアロゾル(広い意味での空気感染)であろうと、飛沫(ひまつ)であろうと、ウイルスを吸い込むことで感染します。青い防護服を着て、ゴーグルと手袋をつけて患者に対応するイメージが強いと思いますが、体液に触れるなどかなり濃密に接触しない限りは、防護服などは必要なく、マスクだけで十分です。これまで接触感染に重点を置いた対策もしてきました。机を頻繁に消毒するのがその例ですが、これで感染する確率は低く、わずか1万分の1です。みんな一生懸命消毒してきましたが、それが重要なわけではありません。病院の待合室も換気ができているか、空気清浄機を置くことによって、コロナ患者とそうではない患者の絶対的分離に固執しない対応が可能です。

――それで本当に大丈夫でしょうか。

 神奈川県ではすでにこうした対策指針を出して対応の転換を図っています。第7波は、県の医療機関は大きな混乱なく乗り越えることができました。医師も看護師も多数感染したということはありません。

――コロナ後遺症について不安の声もあります。

 医学的には、罹患(りかん)後症状と後遺症は別です。罹患(りかん)後症状は最終的に治るものを含みますが、後遺症は治らないものです。コロナの罹患後症状は風邪などの病気と比べて、症状が続く期間が少し長かったり、症状が重かったりしています。だから、2カ月間は注意して様子を見るようにしたほうがいいです。ただ、2カ月を過ぎると、罹患後症状のある人はグッと減ります。2カ月たっても症状がある人たちには引き続きしっかりと研究を行い、患者の苦しみに寄り添った治療をしていく必要があります。

 ただ、罹患後症状自体はほかの病気でもあります。「病み上がり」と言われるように、大きな病気をしたらしばらく調子が悪いです。それぞれの疾患ごとに特徴的な罹患後症状や後遺症が存在しています。コロナの罹患後症状、後遺症もこの疾患の特性なのです。こうした観点から、コロナの罹患後症状、後遺症は社会活動を止めるべき問題と考えるのか否かを皆で冷静に考える必要があります。

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第8波対策の肝は?