神奈川県が配布した抗原定性検査キット
神奈川県が配布した抗原定性検査キット

――全数把握をやめることで、詳しい感染状況が把握できなくなる懸念があります。

 サーベイランス(感染状況の監視)は全症例把握と結び付けて考えられてきましたが、インフルエンザのように定点で監視することも可能です。外国では下水で感染状況を監視していたりもする。サーベイランスと全症例把握は分けて考えるべきです。

――コロナを感染症法の2類から5類にするべきだという議論があります。

 第7波でここまで世の中が苦しんできたのは、2類相当とされてきたからです。2類相当になっているために、保健所も医療機関もすべての発生届を登録し、どこの誰が感染したのかを管理しなければならず、オミクロン株が感染拡大するなかで、相当な負担を保健所や医療機関に強いました。

 また、感染者や濃厚接触者に外出自粛要請できたのもこの2類のためです。現在は緩和されましたが、厳密にいえば、外出自粛要請を受けた人が外に出ると不法行為となります。現状のコロナはそのような取り扱いをすべき病気かというと、そうではありません。

 コロナの位置づけを変えるべきですが、単純に「5類にするべし」とは考えていません。コロナの特性を踏まえて5類の枠組みを変えるのか、もしくはコロナを想定した新しい枠組みをつくるのか。いずれにしても今の取り扱いが妥当ではないのですから早急に変更を検討して国民に予告することが必要でしょう。

――監視下に置かないと、自粛せずに外出する人が出てくる懸念もあります。

 濃厚接触者であったり、熱があったりするのに外出するなどルールを守らない人も出てくるでしょうが、そういった人が出てくるのはほかの病気でも一緒です。大多数の人が適切にマスクをする、自宅待機をする、など基本的な感染症対策を守ってくれれば、医療体制が機能する社会を目指すべきです。

 そのための手も打っています。ゲームチェンジャー(流れを変えるもの)になると考え、昨年5月から抗原検査キットを国民がセルフチェックとして自分で使える働きかけをしてきました。昨年7月に内閣府の規制改革推進会議で取り上げてもらい、薬局で抗原検査キットを、対面販売に限ってですが、購入できるようにしてもらいました。また、8月にペーパーを出した前後から、政府分科会の尾身茂会長とともに「対面販売だけではなく、インターネットでも購入できるようにするべきだ」と働きかけてきました。全数把握の見直しとともに、インターネット販売も解禁されました。

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検査キットはどこまで有効なのか?