<毎日を素直に楽しむ人生の達人 松本千登世さん(美容ジャーナリスト・エディター)>
●小さな会話も丁寧に気に留める
その美しいものへの感性と心の穏やかさは20代の頃からのお手本です。
出会いは、親友の結婚式で司会をしたときのこと。実をいうと、こういった友人の人生の大切な門出の場は、仕事よりもはるかに緊張してしまうのです。
「絶対失敗できない! 誰か助けて!」という気持ちで式を進行している私の目に飛び込んできたのは、「うんうん」とやさしくうなずきながら話を聞いてくれた松本さん。後日、お疲れさまの食事会で親友が紹介してくれて以来、公私ともにずっと憧れてきた理想の「大人の女性」です。
いつも大忙しのはずなのに、いつお会いしても物腰が柔らかでオアシスのよう。松本さんが「そうそう、この間ね、こんな素敵なことがあってね……」とニコニコしながら話してくれる小さなエピソードは、聞いているこちらまでホッと安らぐあたたかさにあふれています。
それは、日々の暮らしの中で、人のやさしさや幸せの瞬間を見つけて、素直に学ぼう、喜ぼうというまなざし。
<あのね、この前、店員さんが、お会計の際にこんな言葉をかけてくれて>
<エレベーターで一緒になった同じマンションのご婦人がこんなふうに接してくれたの>
など「姉さん、そんな小さい一言まで……」というやりとりを大切に記憶し、うれしそうに分けてくれるのです。
●「人は人」と心得ているから
私の悪いクセとして、人の言葉を捉えては「その奥には何があるのかな」と必要以上に考えすぎて、自分勝手に解釈してしまうことがあります。心に余裕がないときはとくに。
しかし、松本さんと笑いながら互いの近況報告をしていると、そんな心配性のひねくれた自分に気づき、「いけない」とハッとします。
人に対してもっと素直でいい。そして毎日のなにげない出来事に対して、もっと喜んでいい。
「人には人の価値観がある」と、深いところで理解した上で、感動上手、喜び上手、というのでしょうか
そのご著書(多数!)を読むと、自分と違うものをおおらかに取り入れながら、ブレない芯の強さも感じます。私も年齢を重ねるほどに豊かなものの見方ができて、まわりの人たちの気持ちをふわりと軽くできたらいいな。
難しく考えすぎず、大きく構えず、自分の日々に飛び込んでくる小さな出来事に喜んだり感動したり。毎日はもっと楽しめる、うれしい出来事はそこかしこで起きているよ、と軽やかに教えてくれる大好きな女性です。
【ここまで聴いてくれたあなたへ】
あなたにとって、先生と呼べる人は誰ですか?
(構成/小川由希子)