気づいたら「あれれ、純次さん、どこどこ?」とすっかり街に溶け込んで、みんなで一緒に笑っていたりして。商店街でわっとマダムたちに囲まれたときも、さわがしいアジアのマーケットでも、ハリウッドの高級住宅街でも、いつも自然体で人との境界がありません。
そこにあるのは、「きっかけは、まず自分から」という気遣い。目の前の人を喜ばせたい、笑わせたい!というサービス精神。しかも「力み」がありません。「あなたのお名前は?」「史香です」「大好きな名前のひとつです!」と、終始こんな感じ。
しかも相手に「アハハ、おもしろい人」と笑ってもらい緊張を解いたあと、「では、いい話をしてくださいね」、という下心もなく、「あなたはただ楽しんでくださいね」と徹底したスタンス。「自分がうまく立ち回りたい」「見せ場を作りたい」というエゴがないので、こちらもほのぼのした気持ちになるのです。
●相手に気を遣わせない「無邪気な」気遣い
そもそも高田さんとの出会いは、大学生時代に通訳兼ADとしてアルバイトしていたときのCM撮影の現場でした。
深夜まで続いた収録では疲れも見せず、スタッフと声をかけ合っては終始ご機嫌の高田さん。下っ端の私にでさえ明るく「学生さんなんでしょ? 明日の1限、大丈夫~?」と。
例のおどけた感じの一言でしたが、こんなにもさりげなく、思いやりを表現することができるんだな、私もこんな大人になりたい、と静かに感動したのを覚えています。
まわりを明るくするには、自分自身にたくさんのエネルギーが必要。おおらかで全世界にハッピーをふりまく無邪気な子どものようでいて、その根底では相手のことを第一に考えている高田流コミュニケーション。
いつも上機嫌でテキトーに見える会話は、表には決して出さない、気遣いの奥義があふれています。
<仕事の流儀 松尾潔さん(音楽プロデューサー)>
●魅力を引き出す言葉がけ
「またこの松尾“KC”潔さんって方だ。カッコいい文章だなぁ……」
そのお名前を意識するようになったのは、学生だった90年代。インターネットの夜明け前、音楽雑誌の記事やCDのライナーノーツなどで、圧倒的知識とウィットにあふれた批評を目にしては、どんなお方なんだろうと想像を膨らませていました。