王将フードサービス(京都市)の大東隆行前社長
王将フードサービス(京都市)の大東隆行前社長

 2013年12月、「餃子の王将」で知られる王将フードサービス(京都市)の大東隆行前社長(当時72)が本社前で射殺された事件。京都府警は、犯行に関与した疑いが強いとして28日、特定危険指定暴力団工藤会系組幹部の田中幸雄容疑者(56)を殺人容疑などで逮捕した。事件は発生から8年10カ月で大きく展開した。

【写真】銃撃された現場に置かれた花束

 犯行が早朝で現場の目撃者はおらず、有力な情報もなく、難航していた捜査。田中容疑者の名前が浮上したのは、事件から2年が経過した2015年だ。きっかけは、現場に落ちていたたばこの吸い殻と、田中容疑者のDNAが一致したという情報だった。

 当初は田中容疑者の逮捕が近いという見方もあったが、

「捜査かく乱のため、たばこの吸い殻を誰かが意図的に置いた、ゴミなどなんらかの理由で現場近くに落ちていたなど、さまざまなケースが考えられる。ただ単にDNAが一致しただけでは、逮捕はできない」(捜査関係者)

 と捜査は慎重な姿勢で進められた。

 工藤会や田中容疑者と王将の接点が見いだせなかったのも、捜査が難航した理由の一つだった。

 事件後、王将は反社会的勢力との関係が報じられたことから、第三者委員会を設置。2016年3月に第三者委は報告書を公表し、反社会的勢力との関係はないとの結論だったが、福岡県を中心に不動産関連事業を営むA氏と王将の「怪しい関係」を明らかにした。

 報告書によると、A氏は王将の出店の口利き、店舗火災による補償交渉などに関与して、王将の創業家に近づいた。その後、A氏が関連する不動産やゴルフ会員権を相場より高値で王将が買うなど、関係を深めたという。報告書では、約260億円が王将から流れ、170億円が未回収のままであるとしている。

 大東氏は創業家に代わり、これらの不正取引の清算を進めていたという。王将の元幹部が言う。

「関連会社を通じて90億円をA氏側に貸していたなど、株価に影響するような報道もあり、大東さんが、A氏への不透明なカネの流れやその関係を断ち切ろうとしていたのは事実です」

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら
次のページ