だが、まだ逮捕されたのは田中容疑者のみ。捜査関係者はこんな見方をする。
「当然、逃走や拳銃の準備など、協力者がいるはず。また、田中容疑者に誰かが指示をして事件に及んだことは間違いない」
田中容疑者の背後関係や動機などは、まだわかっていない。また、田中容疑者が使用した拳銃など、直接、犯行につながる証拠も発見されていない。田中容疑者の自供がないと、捜査は厳しいという見方もある。
京都府警から京都地検に、王将事件についての「すべての捜査記録を送って検討をはじめた」という捜査情報を筆者が知ったのが1年ほど前。捜査幹部はこの情報を認め、
「検察の意見を聞き、立件をしたい」
と当時、語っていた。
元東京地検特捜部検事の落合洋司弁護士は、こう語る。
「これまで逮捕に慎重だった検察がゴーサインを出した。おそらく追加捜査で起訴できる証拠が見つかったのではないか。周辺の人物から『田中から犯行を聞いた』などの証言が得られたとも考えられる。もしくは捜査を尽くしたので、逮捕して自供を迫るという狙いかもしれない。自供を得られなくとも、工藤会の犯行と印象づけはできる。稀にそういう逮捕もある」
田中容疑者の逮捕が、事件の真相解明につながるのか。
(AERA dot.編集部・今西憲之)