トリオの笑いの起点となっているのが角田である。彼は芸人の中でも屈指の味わい深いキャラクターを持っていて、普通のことを大声で叫ぶだけでもなぜか面白くなってしまうという特異体質の持ち主だ。

 細かい人間心理を捉えた彼らのコントがこの上なく面白いものになっているのは、角田が大立ち回りをして、そこに潜む小さな笑いの火種を増幅させてくれるからだ。

 豊本明長は何を考えているかわからない不思議な存在感を持っていて、角田とは違う切り口で笑いを生むことができる。飯塚は演技力があるのはもちろん、シンプルで力強いツッコミを得意としている。

 飯塚の一般人っぽい外見は、バラエティ番組でビジュアル的に映えるものではない。でも、それが視聴者に安心感や信頼感を与える部分はある。そういうところが評価されてMCとして起用されたのではないか。

 上の世代の芸人の中で、飯塚に近い存在感を持っているのが内村光良である。内村もまた、コントに人生を捧げたコント職人であり、タレントとして売れてからもコントにこだわってきた。飯塚もそれに近い道を歩んでいる。ゴールデンMCとして一歩踏み出した飯塚は、いまや「ポスト内村」の最有力候補である。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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