(左から)豊本明長、飯塚悟志、角田晃広
(左から)豊本明長、飯塚悟志、角田晃広
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 10月14日、東京03・飯塚悟志とウエンツ瑛士がMCを務める『熱狂!1/365のマニアさん』(TBS)が放送された。特番として何度か放送されていたこの番組が満を持してレギュラー化された。飯塚がゴールデンタイムのレギュラー番組のMCを務めるのは初めてのことだ。

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 アンガールズの田中卓志も今年4月に始まった『呼び出し先生タナカ』(フジテレビ)で初めてゴールデン番組のMCを務めている。田中がテレビタレントとして一歩一歩着実に歩みを進めてそこにたどり着いたように見えるのに比べると、飯塚のテレビでのキャリアは少々変則的である。

 飯塚も含めて、東京03はどちらかと言うとバラエティ番組への出演が多い芸人ではなかった。2009年に『キングオブコント』で優勝したことがきっかけで知名度を上げたものの、そこからテレビタレントとしての活動が一気に増えたわけではなかった。彼らの活動の中心はあくまでもライブにあった。

 もともと彼らのコントは業界内での評価が高かったのだが、年を追うごとにさらに高まっていった。ネタ番組ではコントを披露する機会もあり、単独ライブの観客動員数も順調に伸びていった。

『キングオブコント』優勝後は全国ツアーが行われるようになっただけではなく、ミュージシャンや芸人のゲストを招いて、コントあり、音楽ありの特別な形のライブも行われるようになった。最近の東京03には「お笑いライブシーンのラスボス」「コントの帝王」という風格がある。

 東京03で角田晃広と共にネタ作りを担当する飯塚のコント界での「格」の高さは『キングオブコント2022』でも感じられた。松本人志がお笑い界の中で別格の存在であるのと同様に、飯塚もコントを生業とする芸人たちの間では別格の存在である。審査員を務めた飯塚の一語一句が、出場する芸人たちの心に刺さっている感じが伝わってきた。

 東京03のコントは、一見すると地味な感じがする。登場人物はそこら辺にいそうな普通のサラリーマンやOLばかり。設定も会社や居酒屋などの日常的なものが多い。最初に小さな事件があり、それを発端としてすれ違いが起こったり、いさかいが生まれたりする。ありふれたシチュエーションで人間心理の機微を素材にして笑いを生み出していく。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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飯塚がMCに起用されたのはなぜか?