「こんな状態が続けば、当然成績は伸び悩みます。子どもは“わかりたい”のにそれができない。いったい何のための塾なんだ?と、首をひねりたくなります」(吉田氏)
結果、「大手塾についていくため」に別の塾と併塾せざるを得ない。個別指導塾で、大手塾の授業で理解できなかった部分の補講を受けることになる。費用も時間もかかり、子どもの負担も大きい。
「何より、子ども一人一人の到達度を塾が総合的にみることができません」と吉田氏は危機感を持つ。そこで、子どもの理解を深めるには集団授業で教えている講師が、個々のわからない部分を把握して指導すべきだと考え、「進学館ルータス」では集団授業と同じ講師による個別指導を3年生から組み込んでいる。
同塾が開校前のイベントとして行った「サロンdeルータス(個別教育相談)」にも、悩みを抱えた親たちが多く訪れ、ときには数時間話が途切れない人もいたという。
どの親も口にするのは「相談する相手がいない」こと。大手塾では面談の機会があまりなく、講師も忙しそうで声をかけにくいという。吉田氏が指導していた関西では、塾はサポートが手厚いかどうかをシビアに判断される文化があったという。一方、首都圏は「中学受験は親の受験」という意識が強く、塾が学習の多くを家庭に任せていると感じる。
「私は相談に来た保護者には『勉強を教える必要はない』と声をかけるようにしています。驚かれる人が多いのですが、本来、勉強は塾で完結させるものなのです」(吉田氏)
それを実践するために、「進学館ルータス」では、オールインワン教育を掲げ、少人数集団指導、個別指導、宿題教室、理科実験教室をセットにすることで、1人の生徒を手厚く面倒みる。そして、定期的に塾生や保護者と向き合うカウンセリングを行うことで、無用なストレスを抱え込まないようにしていくという。
中学受験での保護者の心構えとして、吉田氏は「かきくけこ」を掲げる。か=過去に捉われるな(あの時はできていたのに……)、き=キレるな(つい、カッとしてしまうもの)、く=比べるな(友達や兄弟姉妹と比較しがち)、け=健康管理を徹底せよ、こ=困ったら塾に相談せよ、の頭文字だという。