吉田努氏(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
吉田努氏(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
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ベネッセグループ初の中学受験塾「進学館ルータス」を率いる吉田努氏に「中学受験の本質」を聞く連載の第2弾。関西中学受験界で圧倒的な実績を残した吉田氏は、今年、そのノウハウを武器に首都圏に進出した。そんな吉田氏の目に映ったのは、東京の大手中学受験塾の“いびつさ”だった。生徒たちは大量の宿題に振り回され、親は疲れた顔をしている。親子に無理を強いらずとも「合格させる塾」とはどのような塾か。親が塾を見分けるためのポイントと、その活用術を聞いた。

【ランキング】偏差値50台で入れて国公立大に強い首都圏の中高一貫校

※記事<<統括・吉田努氏はどうやって灘中合格者を激増させたのか 「馬渕教室改革」の真相>>より続く

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 過去に類をみないほど中学受験が過熱する今、その主戦場となる「進学塾」も群雄割拠の様相を呈している。特に難関校を狙う家庭が多い都心部では、合格実績の高い塾に生徒が集中する。大手ではサピックス、早稲田アカデミー、四谷大塚、日能研がしのぎを削り、難関校にターゲットを絞った小規模な新興塾も増えている。

 中高一貫校への進学率が40%近い都心部では、小学校1年生の時点で入塾制限がかかっている校舎もある。高い合格実績をあげている塾が先取りのカリキュラムを押し進めれば、他塾も合格実績アップ、塾生獲得のために、負けじとカリキュラムを改定し、ハイスピードで授業を進めるという傾向が加速している。

 ベネッセグループの中学受験塾「進学館ルータス」の開校にあたり、昨年夏から都内のさまざまな塾を見て回っている吉田努氏は「どの塾も同じような指導をしている。それでいて、塾と受験生との間に距離があるように感じる。塾の授業で子どもの学習意欲が満たされていないのではないか」と話す。

 吉田氏は開校に向けて保護者の学習相談にも乗っているが、多く寄せられる悩みが「塾に一生懸命通っているのに一向に成績が伸びない」というものだ。授業はハイスピードで進むので、深い理解は個々に委ねられてしまうが、宿題は多く出る。わからないことを講師に聞こうとしても、授業後にはすぐに質問者の行列ができてしまう。質問できても時間が限られるため、塾によっては、質問は一人1問までというルールがあり、複数ある場合は列の最後尾に回ってまた並び直す、といったこともあるそうだ。時間切れで結局、その日のうちに疑問点が解決できないこともある。

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勉強は塾で完結させるもの