もちろん、球団関係者のみでなく全国の阪神ファンの期待も膨らんでいるだろうが、立場によってはテンションに多少の温度差を感じる部分もある。

「阪神が強いのは万々歳だが球団に対しては疑問を感じる時もある。我々は何十年も前から町を挙げて応援してきた。低迷した暗黒時代も盛り上げてきた。そういった過去がなかったかのような接し方は、寂しいし複雑な思い」(尼崎市在住の阪神ファン)

 阪神の本拠地・甲子園からほど近い阪神尼崎駅前の尼崎中央三丁目商店街では、毎年3月に「日本一早いマジック点灯」が行われている。2002年から始まったマジック点灯は阪神への純粋な思いからだった。当時は1990年代からの「暗黒時代」が続いていた。球団も試行錯誤を繰り返し外様の星野仙一氏を監督に招へいするなど必死だった。結果的に2003年にリーグ優勝し、人気と実力が伴う伝統球団の輝きを取り戻し始めた。

 その後も勝ち負けに関係なく甲子園には多くのファンが駆け付けるなど、阪神人気は続いているが、その“副作用”もあるという。

「阪神球団は集客以外の部分で利益を上げるため、権利ビジネスに注力し始めた。阪神の名前を使用している尼崎商店街へのロイヤリティ請求額も増えたようです。コロナ禍で球団収入が大幅に減少していることもある。スポーツビジネスとしては当然の動きですが……」(スポーツマーケティング会社関係者)

 球団が権利を持つロゴマークなどを使用すればロイヤリティが発生するのは自然なこと。これまでも多少の使用料金を払うことでお互いが納得し、二人三脚でやっていた歴史があった。しかし日本有数の超人気球団となったことで、地元への対応にも変化が出始めたのだという。

 また、世界中に大打撃を与えたコロナ禍はプロ野球界にも暗い影を落とした。球団経営にはどこも頭を痛めており阪神も他人事ではない。球団内部には“強くなりそうなチーム”に複雑な思いをしている人々もいる。

「コロナ禍の収束気配は見えてきたが、以前の状況に戻るまでは時間を要する。甲子園でさえ試合によっては満員にならない。しばらくは緊縮財政でやりくりする必要がある。しかしチームが優勝すれば、選手年俸などの人件費は高騰する。経営者側からすると複雑な思いでしょう」(在京テレビキー局スポーツ担当者)

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「阪神優勝を心底願えるような時代に戻りたい」