板尾創路さん(撮影/中西正男)
板尾創路さん(撮影/中西正男)

 あと、芸人が出す“面白さ”の質も多様化しています。良い悪いではなく、例えば「ピース」の綾部(祐二)なんかはアメリカで暮らしてるだけで成立してますからね。あれはあれで、一つの“面白い”ですものね。

 彼がアメリカに渡った頃はまだ「日本を離れたら席がなくなる」と言われてましたけど、そこから5~6年で時代はガラッと変わりました。価値観が変わるというか、しっかりとしたオンリーワンの武器になるんですから。

 世の中もいろいろ変わってますけど、よく考えたら、もう僕も相当長いこと仕事をさせてもらってきました。

 この世界が好きで、こういう仕事が好きで、これまで他の仕事もちゃんとやったことがないままここまできましたけど、結局求められているものをやってきただけ。そんな時間でもありました。芝居のお仕事も自分から向かっていったというよりも、ありがたいお話が重なって今の状況になりました。

 来年で還暦ですか。60歳と言えば立派過ぎる歳ですけど、最近やっと大人になれたかなと感じています。

 若い頃は自分のことしか考えてなかったんですけど、今はどの現場に行っても、そこにいる全ての人の中で自分が最年長ということが増えてきました。

 そうなってくるとおのずと全体のことを考える自分がいるというか、全体がうまくいくにはどうしたらいいか。関わってくれている人みんなのことを考えて行動することが確実に増えてきましたね。

 無理にそれをしようと思うのでもなく、頑張って全体を見ようとするのでもなく、自然と意識がそちらに向く感覚といいますか。

 結局ね、そういうことに意識を向けながら仕事をすることに充実感を得てるんやと思います。自分の年齢や立場的にもそれを感じる年齢になったんやと思います。

 映画の現場に行ったりすると、エキストラさんがたくさんいらっしゃいます。みなさん待ち時間も長いし、体力的にも本当に大変です。

 エキストラさんの士気が落ちたら映画のクオリティーにも関わってくるので、暑い現場やったら冷たいものを飲みやすいように置いておいてもらうとか、そういう話をスタッフさんにしたりね。あとは、何か皆さんがスッと食べやすいもの。なんなら、サッとポケットに入れておきやすいものとかを考えて差し入れをするとか。

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今でも自分に余裕があるわけじゃない