ずっと表情を崩さなかった足立被告だが、この証言には動揺したように見えた。
検察側は、足立被告が富夫さんの血糖値を測定し、下限に近付いた時点で119番通報していると主張。足立被告が119番通報した時の音声も公開された。取り乱すことなく住所などを告げ、淡々とやりとりする様子を表すものだった。
次に「聖光さん殺害」の犯行状況について、検察側は以下のように説明した。
富夫さんが低血糖で病院に運ばれてから2カ月後、足立被告は母親に頼んで聖光さんを呼び出し、母親と聖光さんの飲み物に睡眠薬を混入して眠らせた。しばらくして、練炭が燃やされたトイレで一酸化炭素中毒死した聖光さんが発見された。
検察側は、足立被告が、聖光さんが富夫さんを殺害して自殺したかのように見せかけようとしたとして、
「聖光さんのカバンに富夫さんが使っていたインスリンの注射器を入れた」
「聖光さんの(犯行をほのめかす)遺書を(足立被告がパソコンで)作成していた」
「遺書の作成経過を(足立被告の)パソコンデータから解析したところ『聖光さんが妻と一緒に死ぬ』との記述もあった」
などと指摘。聖光さんの妻の殺害も計画していたとの見方を示した。
その理由について、聖光さんとその妻は、足立被告が富夫さんの殺害にかかわっているのではないかと疑っていたといい、「父親の事件の犯行を隠したいという気持ちから、富夫さん殺害を疑っている聖光さんへの犯行に及んだ」
と結論づけた。

今回の事件は、直接の目撃証人がいない。
検察側は、犯行に及べるのは足立被告しかいないという見立てを前提として、周辺証拠を捜査していた。なかでも重要と位置付けたのは、スマートフォンの検索履歴だ。
「富夫さんが低血糖で119番搬送されるときも、どれくらいの数値で亡くなるかなど足立被告が何度も調べていた」
「足立被告は眠ることなく、富夫さんの血糖値を計測していた」
などとして、足立被告が用意周到に計画した上での犯行と主張した。