東峯婦人クリニック理事長、松峯寿美先生(撮影/新井智子)
東峯婦人クリニック理事長、松峯寿美先生(撮影/新井智子)

 また、もともとの卵胞の数には個人差があり、数が少ない人の場合、35歳で閉経を迎える「早発閉経」となるケースも。なかには、生まれた時点ですでに卵胞がない人もいるのだ。

■生活スタイルや環境因子も影響する

「更年期症状の程度に個人差があったり、閉経の時期に個人差があるのは、生まれつき持っている卵胞の数、使い方に個人差があるからです。必ずしも『仕事で無理した』からと、それだけが原因で更年期症状が重くなったり、早く閉経したりするわけではないのですよ」(松峯先生)

 さらに、これまでの生活スタイルや環境因子も卵巣のクオリティーに影響する。月経が周期性を持っていた20~40代に「規則正しく生活していたか」「バランスのよい食事をしていたか」「適度な運動をしていたか」「無月経などのホルモン異常を放置していなかったか」などの因子が、卵巣のクオリティーに影響している可能性もある。

 更年期を迎える40~50代は職場で責任ある立場を任されていたり、家族の介護でストレスを抱えている人も少なくないだろう。人間関係のストレス、親族との不仲、パートナーとの死別、離婚などが引き金となって、症状が悪化するケースもあるという。

 そもそも女性ホルモンは月経や生殖をコントロールしているだけではなく、自律神経をつかさどって、体温や血圧、消化活動などをはじめとした生命活動を支え、感情を調整する役割がある。そのため、女性ホルモンの分泌がいきなり急降下すると、自律神経が揺さぶられ、さまざまな不調に見舞われやすくなるのだ。

「つらい症状が長引くと、生活に支障をきたしますから、決して放置したりしないで、婦人科を受診していただきたいです。女性ホルモン補充療法(HRT)や漢方の処方を受けることで、体や心の不調がぐんとやわらぎますよ。女性ホルモンを補うことで、急激にドスンと急降下するのではなく、なだらかに軟着陸させてあげることができるからです。例えば、飛行機が急降下したら大事故につながる可能性がありますが、軟着陸して衝撃をやわらげれば、乗客が生き延びることができるのと同じだと思いますよ」 (松峯先生)

 もしも日替わりで、心と体にさまざまな症状が現れたり、寝込むほどの不調におそわれたときは、軟着陸するためにも、1度婦人科医に相談しよう。

(スローマリッジ取材班・大石久恵)

松峯寿美(まつみね・ひさみ)医療法人社団東寿会理事長、東峯婦人クリニック名誉院長、日本産婦人科学会専門医、医学博士。1970年 東京女子医科大学院卒業後、同大学病院に勤務し、「不妊外来」を創設。ガン研究会附属病院では、女性医師第1号として入職。その後、東京女子医科大学医学部、看護学部の講師として勤務。1980年、東京・木場に女性専門外来の先駆けとなる東峯婦人クリニックを開業。妊娠・出産はもちろん、思春期・更年期・老年期の女性に寄り添い、40年以上診療を続けている。骨盤底筋トラブルの治療や子宮脱を改善する経腟手術も行い、婦人科系QOL(生活の質)を保つ医療を実践。親子3代で通院する患者さんも多い。著書に『更年期の処方箋』(ナツメ社)、『50歳からの婦人科』『60歳からのセックスクリニック』(ともに高橋書店)など多数。

東峯婦人クリニック https://www.toho-clinic.or.jp/

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