『婦人科医が不安と疑問に答える 更年期の処方箋』(ナツメ社)』より
『婦人科医が不安と疑問に答える 更年期の処方箋』(ナツメ社)』より

 長引く不調を放置すると、症状が悪化するケースもあり、生活に支障をきたす場合は「更年期障害」と呼ばれる。だれもが重症化するわけではないのだが、松峯先生によれば、更年期症状を感じる女性の約3割が「更年期障害」に陥っているという。

■更年期症状には“卵巣の個体差”が影響している

 そもそも、症状が重くなりやすい人と、軽くすむ人では、何が違うのだろうか。

「不規則な生活をしていたり、つらいことがあったりすると、更年期症状が悪化するケースもあります。でも、それだけが原因ではなく、『生まれ持った卵巣の個体差』が影響していると考えられます」

 と松峯先生。

 実は女性ホルモンの減少の仕方には個人差があるという。閉経に伴って、女性ホルモンが作られなくなり、【女性ホルモンの分泌が突然止まってしまう人】がいる一方で、【少量ながらもじわじわと女性ホルモンを分泌し、フェイドアウトしていく人】の2タイプがいるというのだ。

 前者のケースでは、寝込んでしまうほどの不調におそわれる人もいるが、後者はなんとなく不調を感じながらも、「いつの間にか、更年期を抜けた」と感じる人が少なくない。

 松峯先生によれば、卵巣の個体差は人それぞれで、遺伝的な要素もあるという。

「私たち女性が卵巣内に持っている卵胞(卵子のもと)の数、その使い方、消耗の仕方は、生まれたときからプログラミングされています。女性は、胎児の頃にすでに300万個の原子卵胞を持っていますが、誕生から思春期までの間に、30万~50万個くらいに自然と減ってしまいます。そして、初潮を迎えると、そこから毎月5~6個の卵胞が成熟し、その中から選ばれた主席卵胞1個だけが排卵するしくみがあります。残りの4~5個の卵胞は消滅してしまうんです。

 そうして毎月の排卵を繰り返しながら、卵胞が減っていき、閉経を迎える50歳前後には300個くらいしか残っていません。実は、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)は、一つ一つの卵胞が成熟するときに、それらの卵胞から分泌されるメカニズムがあるのです。つまり、卵胞が減少すれば、エストロゲンがどんどん枯渇してしまうわけです。閉経して女性ホルモンが枯渇するのは、成熟して排卵できる卵胞が残っていないからなんですよ」

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卵巣のクオリティーには何が影響する?