写真はイメージです(Getty Images)
写真はイメージです(Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 不登校の子どもの増加が止まらない。高校生もかなり多く、現在、60人に一人が年間欠席が30日以上といわれている。原因のトップ3は、(1)無気力・不安、(2)生活リズムの乱れ・遊び・非行、(3)入学・転編入学・進級時の不適応となっている(文部科学省「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」より)。しかし実際にはひとりひとり事情がある。誰もがうらやむような人気者が、ある日突然立ち上がれなくなり、不登校になってしまうこともある。そんな経験をした男性に、どうやって再び前に進むことができるようになったのか、話を聞いた。

【図】生きづらさの理由は?女性の場合はこちら

*  * *

 重原誠(仮名)さんは、現在19歳。男ばかり三人きょうだいの長男で、実家暮らしをしている。

高校1年のときに不登校になり、退学。それから3年ほど引きこもり気味になり、体調を崩して入退院を繰り返した。

「ようやく外に出られるようになり、今では勉強したり、友達とサッカーができるくらいに回復しました。でもすいぶん勉強が遅れてしまったので、まだ今年度の大学受験は無理。来年1年間、予備校に通って頑張ろうと思っています」(誠さん)。

■学校一の人気者で、頑張り屋

 誠さんは、学校で中心的存在の生徒だった。中学では学級委員に選ばれ、活発で頼りがいのある存在。ときどき一発芸を披露しては、みんなを笑わせるような人気者だった。サッカー部員としても、誰よりも練習熱心で、朝は誰も来ていないうちからグラウンドに出て、3キロ走るのが日課だった。

職員室は、しばしば頑張り屋の誠さんの話題でもちきりになった。先生たちはよく、ほかの生徒に「誠を見習え」と言っていたものだった。

「あの頃の自分は目立つのが大好きで、自分が中心にいないと気が済まなかった。毎日が楽しくて楽しくて、幸せだなぁと思いながら通学していました」(誠さん)。

 高校は志望校に合格し、迷わずサッカー部を選んだ。しかし、予想以上に練習がハードで、レベルが高かった。それまでのポジションはフォワードだったが、とてもついていけず、レギュラーになるために選手層の薄いゴールキーパーを目指すことにした。

次のページ
「期待にこたえなければ」と燃えていたが……