誠さんは中学時代以上に、練習に励んだ。早朝の練習はもちろん、午後の部活の後もひとりで居残りして自主練。夜8時までに学校を出るのがルールだが、こっそり隠れて練習していた。
ところが、初めてゴールキーパーとして出場した試合でチームは大敗。「自分のせいだ……」。それまで以上に、体力の限界まで、練習で自分を追い込む日々。さらに、練習以外にも重要なことを任されることが多くなったが、「期待にこたえなければ」という一心で頑張っていた。「みんなはやる気が足りない。僕がこのチームを変えてやるんだ!」。そんな思いで燃えていたという。
次の試合の前日、監督からこう言われた。
「うちはゴールキーパーが弱いと思われてるから、どんどんシュートを打つ作戦で来るはずだ。明日の試合に勝てるかどうかは、お前次第だぞ」
体がカーッと熱くなるような気がした。監督の期待に絶対に応えたいと思った。
そして当日。必死でゴールを守ったが、試合終了間際のロスタイムに、誠さんのミスで得点を許し、チームは負けてしまった。悔しさ、情けなさでいっぱいだった。
「こんなに頑張ったのにダメなら、どうしたらいいんだろう。もうこれ以上は無理だ……」
試合直後、体に力が入らなくなった。這いつくばるように片づけをしていたが、倒れて起き上がれなくなった。体温が異常に低くなっていて、そのまま病院に運ばれた。
■体と心がバラバラに
誠さんは、しばらく入院することになった。
「実はそのだいぶ前から体はSOSを出していたのに、自分だけが気づいていなかったんです。周りの友人や親からも、『お前大丈夫か?』と心配されていたし、自分自身も、ときどき走っている車を見ながら『ここに飛び込んだら、ラクになれるんじゃないか』と思うことがありました。でも、どうしても頑張ることをやめられなかったんです」
しかし入院中も、「こんなところにいるわけにはいかない、学校に行かないと、サッカーの練習をしないと」と焦る。でも体は全く動かない。
「まるで、体が『動いちゃダメ』と自分を止めているようでした」