5万人超もの死者を出したトルコ・シリア大地震は、活断層のずれによって引き起こされた。日本にも多くの活断層が走っているが、どのような特徴があるのか。AERA 2023年3月6日号から。
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美しい街並みは、一瞬にしてがれきと化した。
2月6日、トルコと隣国シリアをマグニチュード(M)7.8の大地震が襲った。多くのアパートやモスクが倒壊し、両国合わせた死者は5万人を超える(2月22日時点)。
地震はトルコ東部を斜めに走る「東アナトリア断層」で起きた。比較的活発な活断層として知られていたが、初動の遅れや、基準を守らない建築が横行した結果の「人災」との批判も強い。ビルが垂直に潰れるように崩れる「パンケーキクラッシュ」が多発。壊滅的な被害を受けた街を見ると、地下でうごめく活断層の恐ろしさを実感する。
活断層──。長期にわたり活動を繰り返し、将来も地震を起こす可能性のある断層を指す。断層は地震などによって地面や岩盤がずれ動いた場所。活断層が割れ、動くことで起きる地震を「内陸型地震」という。
日本も2千もの活断層がひしめく「地震の巣」だ。
これまでにも1995年1月の阪神・淡路大震災(М7.3)、2016年4月の熊本地震(М7.3)など、甚大な被害をもたらしてきた。一方、11年3月の東日本大震災(M9)や近い将来M8~9級の巨大地震が予想される南海トラフ地震などは、海のプレート(岩板)が陸のプレートに沈み込む境界で発生する「海溝型(プレート境界型)地震」だ。
日本活断層学会会長で名古屋大学の鈴木康弘教授(地理学)は、日本はプレート境界に位置する関係で、列島全体で地殻変動が激しく、内陸部にも活断層が数多く存在し、その活断層がずれることによって地震が生じると指摘する。
「活断層の長さが長ければ地震のマグニチュードも大きくなります。その関係式がつくられていますが、それを見ると、世界標準に比べて日本の活断層は短くてもマグニチュードが大きめになる傾向も知られています。活断層がずれて地震が起きる時には、断層の近くで極めて強い揺れが起きることがあり、その揺れは通常の建築基準では不足することもあります」
今回のトルコ・シリア大地震も、その例かもしれないという。(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年3月6日号より抜粋