日本とカタールは、それらエネルギー面での結びつきが強い。カタール産原油は総輸入量の9.1%を占め(22年9月)、UAE、サウジアラビアに次ぐ第3位である。液化天然ガス(LNG)は12.1%(21年)で、オーストラリア、マレーシアに次ぐ量を輸入している。
カタールは原油とLNGの輸出によって飛躍的な経済成長を遂げてきた。
「旧市街地の周囲には斬新なデザインの高層ビルがどんどん建っています。特に近年はW杯開催を目指して、建設ラッシュという感じです。冷房設備のあるサッカー競技場を七つも新設しました。地下鉄『ドーハメトロ』も開業しました」
潤沢なオイルマネーは生活にも浸透している。医療費は無料で、社会保障も充実している。
一方、懸念もあるようだ。
「15年ほど前、カタール石油の人事担当者と会ったとき、『金持ちになりすぎると、若者が働かない』と、心配する雰囲気が感じられました。そんなこともあって、教育にはかなり力を入れています」
優秀な人材を育成するため、アメリカのカーネギーメロン大学やジョージタウン大学といった世界的に著名な大学を10校以上も誘致し、しかも、授業料は政府の全額補助が受けられる。
「幼稚園から大学まで無料です」
そう仁藤さんは言うと、一拍おき、こう続けた。「カタール人は、ね」。
“王国”だが独裁的ではない
実はカタールの人口約280万人(20年)のうち、約9割が外国人労働者だ。ドーハ中心部にそびえる高層ビルやサッカー競技場は、彼らの力によって建てられたものだ。
「インド、フィリピン、ネパール、パキスタン、バングラデシュ……こういった国から出稼ぎに大勢来ています」
だが、W杯の開幕を目前に控え、その外国人労働者に対する人権問題も耳目を集めている。大会出場国からも待遇改善を求める動きが相次ぎ、デンマークの選手たちは抗議の一環として家族を伴わずに大会に参加することを発表している。W杯開催が、今後こういった側面に変化をもたらすことになるのかも注目される。
外国人とカタール人は服装が違うので、遠目にもすぐにわかるという。カタール人男性は「トーブ」と呼ばれる白い民族衣装に身を包み、女性は対照的に「アバーヤ」という黒い衣装を着る。
ちなみに、車は日本車が人気で、街中でよく見かけるそうだが、「日本車は外国人労働者用が多く、私の友人はポルシェでした」。