ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんの新刊『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、どうしても相容れない人を相手にしたとき、負の感情に支配されないための「心の持ちよう」をご紹介します。
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■「誰からも好かれたい」から解放された出来事
人とのコミュニケーションはままならないことが多々あります。
会話の際は、相手の人柄、状況や気持ちを想像しながら、話題や言葉、表現、表情に気を配っていますが、どうしたって合わないという人もいます。
人にはそれぞれ、その人の視点があり、事情があり、人生があります。長い時間をともに過ごした家族同士ですら、わからないことだってあります。ですから、自分が関わるすべての人たちと理解し合い、好感を持ってもらいたい、という願いはそもそも現実的ではありません。
頭ではわかっているのですけどね。なかなか悩ましいものです。
もちろん人間ですから、「できるなら好かれたい」というのは自然な気持ちです。でも、自分だってやっぱり苦手な人がいて、理解できない相手がいます。それを棚に上げておいて、自分だけは好かれたいし理解されたいって、考えてみれば都合のいい話ですよね。
若い頃は「こっちがわかろうとしているのに、相手はわかってくれない!」というやるせなさに苦しくなりましたが、歳を重ねるほどに「ま、人それぞれだよね」に考え方がシフトしていくようになりました。
「そっか、そういうものか」と手放したらストレスはぐっと減りましたし、人間関係がとてもラクになったのです。
きっかけは、仕事でご一緒した、とあるスタッフとの関係性。その方は普段、温厚ですが、自分が考えていた形で物事が進まないと、感情的になるところがありました。
怒りが沸点に達すると、「緊張感が足りない!」「気合いが足りない」と、いわゆる精神論や根性論のような言葉が止まらなくなってしまう。初めてその怒りを受けたときはショックで、自分のどこが悪いんだろうと落ち込みました。一方で、その言葉に耳を傾けても、何について注意を受けているのかなかなか理解できず、困ってしまったのも事実です。