当時、この番組を見ていて印象的だったのは、加藤をはじめとするレギュラー陣や山本を慕う後輩芸人たちが総出演して、彼の復帰に対して感情をあらわにしていて、番組上もどちらかと言うと感動ムードの演出が施されているにもかかわらず、当事者であるはずの山本が、まるで他人事のように淡々とした態度を貫いていたことだ。
不祥事によって10年間テレビに出られなかった男を、周囲の人間が心配して、配慮して、手を尽くして、何とか呼び戻してゴールデンタイムのバラエティ番組に出演させたことの重みを、当人がほとんど理解していないように見えた。
その後、山本は地方局のテレビ番組やネット系の動画コンテンツを中心にして芸能活動を再開した。以前に比べると他人に対してやたらと腰が低く、下手に出るような態度が目立つが、それも心から反省しているというよりは「反省した態度を見せないといけないっぽいから、とりあえず反省した感じにしておこう」という浅はかな考えが透けて見える感じだった。
でも、それ自体は悪いことではない。山本は感じる人ではなく、動く人なのだ。彼は親しい芸人やスタッフと共に何かに取り組んだり、笑い合ったり、罵り合ったりすることで笑いを生み出していく。じっと立ち止まって深く反省するようなタイプではない。
今のお笑い界では「言葉の笑い」が優勢だ。その場の状況を一言で的確に表現して笑いにするような頭の回転が速い芸人が重宝される。バラエティの第一線で戦っているのは、言葉の感覚が鋭い人ばかりだ。あいにく山本はそういうタイプではない。だから、現代の笑いの主戦場に彼の居場所はない。
しかし、それでも、山本は自分の人生をエンタメにすることをやめなかった。彼のYouTubeチャンネル「極楽とんぼ山本圭壱 けいちょんチャンネル」は人気を博している。山本と彼を取り巻く人々との関係を長い尺でじっくり見せるYouTube動画からは、彼の人間的魅力が伝わってくる。