ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんの新刊『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、“なりたい大人”の立ち振舞を身につけるためのちょっとしたコツをご紹介します。
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■“大人”ならどうする?
2020年に行われたアメリカ大統領選挙で、新大統領となったジョー・バイデン氏、敗れたドナルド・トランプ元大統領以上に、私が注目したのは副大統領に就任したカマラ・ハリスさんでした。
初の女性副大統領というだけでなく、信念のこもった声と凜としたまなざし。ユーモアたっぷりのお茶目な話しぶり、きびきびと活動的な立ち居振る舞い、親しみあふれる、はじけるような笑顔、挑発に対しても軽やかにかわしたり、と七変化。
そして何より、「あなたはできる」と励まされるような、まっすぐであたたかい言葉選び。これぞ成熟した大人の姿だなと思います。
私自身はというと、嫌なことがあると自分の感情に振り回されてしまったり、「うまく対応できなかったな」「もっと他にやり方があったかもしれない」と悔やむこともしばしば。しなやかで強い憧れの“大人”への道のりは、まだまだ遠い……。
ただ、そんな私でも今日からできるのは、優雅でカッコいい大人の“フリ”をすることです。子どもの頃、誰もが経験のある「ごっこ遊び」のように、自分が思い描く「優雅な大人」のフリを10分でもしてみるのです。
例えば、誰かの言動にイライラするときや、次々とトラブルが起きて、八方塞がりに思えたとき。
「こんなとき、大人ならどうする?」
そう自分に問いかけてみます。
「まぁ、世の中いろんな人もいるよね」「そもそもご縁がなかったのね」と、さらりとスルーするのかな。「大人なら、これもひとつの人生体験」「なるようになる」と捉えて、落ち着いてひとつひとつ確実に解決していくのかな、などと想像してみます。
続けていくうちに、「いちいち慌ててもよくならないし」と精神的にタフになってきますし、人に対して「こうしてほしい」と自分勝手に抱いていた期待のハードルも下がってきます。