また、そもそも、軍事力による「抑止(deterrence)」で戦争を防ぐためには、相手が「戦争してでも守るべき利益」を脅かさないことによって戦争の動機をなくす「安心供与(reassurance)」が不可欠であり、そのためには外交が欠かせない。
いま導入されようとしている敵基地攻撃能力(「反撃能力」と政府は言い換えた)についても、発射間際の敵のミサイルを破壊できるような能力をもつことで「抑止力」が高まり、中国の日本に対する攻撃が躊躇され抑制される、という理由付けがなされている。しかし、今、中国は日本に届く弾道ミサイルを600発以上有しているとされており、日本から直接攻撃して中国大陸のミサイル1発を破壊したところで、その次の瞬間、何百発ものミサイルが私たちの頭上に降ってくるのが現実である。そのような極端に不均衡な状態で、抑止効果があるのか甚だ怪しい。
※記事後編<<「台湾有事は日本有事」で防衛予算を上げたところで勝ち目がない現実 はたして米国は“介入”するのか?>>に続く