今にして思えば、おそらくボクの誕生日パーティーを開くっていうのは建前にすぎなくて、結局は、みんな、ただ大勢で飲みたかっただけなんだよね。「異性と出会いたい」目的で来ている人もいただろうし、ただ、ボクのことを興味本位に「見に来ただけ」っていう人も中にはいたと思う。要するに、ボクの誕生日は「集まるきっかけ」にされているにすぎなかった。そういう「ダシに使われている」ような雰囲気を感じちゃったら、もう純粋に楽しめないよね。
誕生日だからってことで、お酒をがんがん飲まそうとしてくるノリも大嫌い。あのノリはなんなの。繰り返しになるけど、ボクは、一度も会ったこともない人がついでくれたお酒なんて別に飲みたくない。全然おいしくないから。
いろんな人に気を使い過ぎて、疲れたから、途中で帰ろうとしても、「主役なんだから」ってことで全然帰してもらえないし。「主役」という名の呪縛は、ほんとうにきつかった。
帰してもらえないんだったら、せめて、女の子との会話をとことん楽しもうと思っても、全然モテない。どんどんひかれていく一方。どういうこと! 誕生日効果で、周囲がサポートしてくれて、そのおかげで恋人ができましたっていう話も何度か聞いたことがあったから、それを期待したのに。誕生日って、王様みたいな気分にさせてくれるんじゃないの? がっかりだったよ。だから、よく意図がわからない誕生日パーティーには、今後も参加することは絶対ないね。
そういえば、4~5年前に、ボクは、人生最悪の誕生日パーティーを体験したことがある。場所は、友人の家。部屋に入ると、みんなが内緒で待っていてくれて、サプライズなパーティーだったんだけど、ケーキを持って現れたのが、まさかの団長だった……。
どうやら、そのパーティーに参加することになっていた後輩芸人が、おもわずポロッと団長に漏らしてしまったみたいなんだ。「今日は、クロちゃんの誕生日パーティーです」って。そしたら、団長が、「俺もいくわ」って、無理やり参加してきたみたい。なんなのもう! 勘弁してほしい。団長は空気が全然読めない人だから、そういうのに平気で来るんだよね。イカれてるよ。
団長が「おめでとうー、サプライズやー!」って現れた瞬間、この世の終わりだと思った。頼むから「夢であってくれ」ってね。その瞬間、ボクのテンションはガタ落ち。
団長は「もっと楽しそうにしろやー!」って……。
「楽しめるかい!!!」って、ボクは心の中で何度も叫んだ。
ああ、今、思い出してもつらい……。
あんなお通夜みたいな誕生日は二度と過ごしたくないしん。
(構成/AERA dot.編集部・岡本直也)