2位・順天堂大を47秒差で追う3位・法政大の長嶺貴裕は、47秒後にスタートするはずだったが、雷管の入れ替え作業に気を取られた審判員がスタート時間を勘違いしたことから、予定より25秒遅い1分12秒後にスタートする羽目に……。

 この結果、4位・駒沢大との差も25秒縮まり、長嶺は13・2キロ地点で松下龍治に追い抜かれてしまう。

 だが、「松下さんのほうが僕より全然力が上だし、すぐに抜かれるのは覚悟していた」と冷静さを失わなかった長嶺は、差を広げられないよう松下の背中を追いつづけ、17秒差の4位で小田原中継所へ。25秒を差し引くと、まだ8秒差の3位だった。結果的に「災い転じて福となす」の好走が生き、法大は7区で駒大に逆転を許したものの、その後も堅実にタスキをつなぎ、45年ぶりの総合4位に入った。

 中継所を目の前にしながら、繰り上げスタートのピストルが鳴り、タスキが途切れてしまう。選手本人はもとより、見ているファンも思わず切なくなるシーンだが、そんな悲劇が大会関係者の“機転”で回避されたのが、12年の第88回大会だった。

 同年の往路は、2年ぶりのV奪回を狙う東洋大が、“山の神”柏原竜二の区間新の激走で、2位・早稲田大に5分7秒もの大差をつけた。この超ハイペースの影響で、翌日の復路では、東洋大に10分以上の差をつけられた8位・東海大以下13校が一斉スタートとなった。

 東洋大に13分40秒差で往路15位の神奈川大は、復路でもぶっちぎりの強さを見せる東洋大との差が開く一方。8区終了時点で21分23秒差まで広がった。

 7区以降は20分以上の差がつくと、再び繰り上げになる。1回目の繰り上げスタートの結果、短縮された3分40秒を差し引くと、17分43秒差になり、まだ2分17秒あったが、タスキがつながるかどうかは、9区・鈴木駿の走りいかんだった。

 脱水症状で区間16位と遅れた鈴木が鶴見中継所に姿を見せたとき、繰り上げスタートまで20秒を切っていたが、普通に駆け込めば、十分間に合う距離だ。

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ファンをほっこりさせた“温情のタスキリレー”