2018年3月、トランプ政権は中国の鉄鋼やアルミ製品への関税措置を発表。その後、両国は関税の引き上げをヒートアップさせ、米中貿易戦争とよばれる事態に至った。
19年末以降は中国から新型コロナウイルスの流行が始まり、被害の大きかったアメリカは、中国の情報の不透明さなどに批判の矛先を向けた。日本も、経済規模でアメリカに追いつきそうになった1980年代、アメリカから激しい攻撃を受けた。アメリカは、自らの覇権への挑戦を決して許さない国なのだ。
日米間の貿易をめぐる対立は「摩擦」と呼ばれたが、米中間のそれは「戦争」と呼ばれる。状況的には、「新冷戦」に突入したとも言われている両国関係を、『ざっくりわかる 8コマ地政学』から、マンガを交えて解説したい。
20世紀前半のドイツの地政学者カール・ハウスホーファーは、世界をドイツ、アメリカ、ソ連、日本の勢力圏に分ける構想を持ち、ナチスや日本の政策に影響を与えたとされている。後の米ソ冷戦の予言であるという評価もあるが、現在の米中関係をこの延長としてとらえるのは難しいだろう。
東西冷戦では、互いの陣営の経済的つながりは薄く、米ソは対立を続けることができた。しかし、現在の米中は、貿易・金融・人的交流の面で相互依存関係にある。
安い人件費を求めて海外に工場を移転した結果、国内に蓄積されていた技術などが失われ、産業が衰退することを「産業の空洞化」と呼ぶが、その始まりは1960年ころのアメリカ。自動車産業が西ヨーロッパに生産拠点を移し、国内の雇用が減少したことが問題となった。そして、「空洞化」の穴を埋めて力をつけ、次の覇権国家に名乗りを上げたのが中国だった。
貿易戦争で双方が大きなダメージを受けることは明らかで、米中という二大経済大国がダメージをこうむれば、世界経済全体にも影響が及ぶ。18年に始まった貿易戦争も、結局は20年1月に第1段階の合意が成立している。