■チャトランを再び受け入れた兄妹
そんなチャトランが、家に迎えて3年目の4月、とつぜん家を出たことがありました。
その日、庭に1匹の猫が来ていました。前にも来たことのあるオスの野良くんです。
足元にいたチャトランに気づかず、私が何気なく窓を開けたところ、チャトランが庭に出て、勢いよく野良くんを追いかけました。家猫になってから外に出たことがなかったので、慌てて主人と後を追うと、2軒先の家の裏でチャトランが野良くんを威嚇しています。帰ろう、と近づくと逃げて、捕まえることができず……そのまま見失ってしまったのです。
いつもチャトランが食べていたごはんをうちの庭先に置くと空になり、近くにはいるようでしたが、保健所や警察に連絡をいれて、家族で探しながら無事を祈りました。
ウイスキーとシャンパンは、チャトランがいなくなると、なぜか先住のシニア猫がいた時にそうしていたように、夜11時になると2匹揃って自分たちからケージに入って眠りました。チャトランを探す素振りは見せませんでしたが、静かないい子、になった感じでした。
「チャトランが戻ってきた!」と主人が声をあげたのは、脱走から2週間目でした。
庭の石の上にたたずみ、こちらを見ています。娘がガラス戸を開けて好物のおやつを見せると部屋に入ってきたので、戸を閉めて一件落着です。病院に連れていきましたが、けがもなく無事でした。
ウイスキーとシャンパンは、くんくんと匂いをかぎ、そのまますんなりチャトランを受け入れ、日常が戻りました。チャトランはお外が懲りたのか、それ以来、もう二度と庭に出ようとはしません。もしかしたら野良君を執拗に追ったのも「僕のうちだぞ」とアピールしたかったのかな。いずれにしても、脱走を経て、真に“うちの猫”になったように思うのです。
今日も3匹は一緒にこたつで寝ています。仲のいい兄妹とその兄を慕う男子猫と、穏やかにまあるくなって。これからもみんな仲良く、ハッピーな関係でありますように。
(水野マルコ)
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「猫をたずねて三千里」は猫好きの読者とともに作り上げる連載です。編集部と一緒にあなたの飼い猫のストーリーを紡ぎませんか? 2匹の猫のお母さんでもある、ペット取材歴25年の水野マルコ記者が飼い主さんから話を聞いて、飼い主さんの目線で、猫との出会いから今までの物語をつづります。虹の橋を渡った子のお話も大歓迎です。ぜひ、あなたと猫の物語を教えてください。記事中、飼い主さんの名前は仮名でもOKです。飼い猫の簡単な紹介、お住まいの地域(都道府県)とともにこちらにご連絡ください。nekosanzenri@asahi.com