「スライダーが武器でしたが、多用することで腕が横振りになり球が抜けていた。8月以降はスプリットの割合を大幅に増やしたことで、腕が縦振りになり指にかかる球がきっちり投げられるようになった。以前の良い時の姿に復活したのではなく、新たな藤浪の投球スタイルを確立したと思います。この投球を継続できれば、メジャーでも簡単に打ち込まれることはないでしょう」
阪神は岡田彰布新監督が新たに就任。藤浪は残留しても先発ローテーションに入れるか微妙な状況だった。若手の台頭で居場所がないようにも映る。アスレチックとの1年契約は厳しい挑戦になるが、自分の意思で環境を変えた回の決断は無謀とは言えないだろう。
期待値が低かった日本人投手がメジャーで大活躍するケースがある。その代表格が日米通算112勝139セーブをマークした斎藤隆だ。35歳の05年オフにメジャー挑戦を決断。横浜(現DeNA)で不本意なシーズンが続いていたため成功に懐疑的な見方が多かった。メジャー契約を勝ち取れず、ドジャースとマイナー契約を結んだが、開幕直後にメジャー昇格。好投を続けて守護神に抜擢され、06年は72試合登板で6勝2敗24セーブ7ホールド、防御率2.07をマークした。翌07年も63試合登板で2勝1敗39セーブ1ホールド、防御率1.40と抜群の安定感で輝きを放った。
藤浪はまだ28歳。同学年の大谷翔平のライバルと言われた右腕は、このままでは終われない。異国の地で大ブレークする姿を見たい。(今川秀悟)