算数1科入試の募集人員は各校とも5~20人程度。入試問題の難易度は学校によってさまざまだ。2科、4科入試の算数とほぼ同レベルのところから、文章題に特化した思考力を要する難度の高い問題を課すところまで差があるので、受験を目指すなら過去問はチェックしておきたい。
今のところ、算数1科入試で入学してきた生徒を対象に特別授業を行っている学校はないようだ。
「たとえば英語入試で入学してきた生徒の場合、英語は実力差が大きいので習熟度に分ける必要がありますが、算数は2科、4科の生徒とそれほど大きな開きがあるわけではないので、その必要はないのです。そもそも定員が少ないので、算数1科入試の生徒だけでクラスを編成するのは難しい」(安田さん)
算数1科入試を行っている学校の調査によると、入学した生徒は概して他の教科の成績も良いという。20年度から算数1科入試を始めた富士見の入試広報部長・藤川建先生は、導入にあたり「過去10年間の算数と他教科の相関関係を調べたところ、算数の成績が良い生徒はおおむね4教科とも平均して高いことがわかりました」と話す。
「さまざまなタイプの受験生に来てほしい」(藤川先生)という狙いどおり、同校では実際に、この3年で受験者層の幅が広がったという。
同校の算数1科入試の問題は大問3題で構成されており、問題用紙内に計算できるスペースを広くとっている。作問について、数学科の福田修平先生は次のように話す。
「何を目的に問題を作るか教員同士が話し合い、算数1教科でさまざまな力を測りたいという結論に達しました。そこで文章題に限定し、リード文を読解して必要な情報を探し出し、試行錯誤して解いていくような問題にしました」
藤川先生は「難問が出題されるのでは、と思う受験生も多いようですが、決してそうではありません。基礎となるのは、中学入試に向けて取り組んできた学習です。多角的に考える力、粘り強く取り組む姿勢がある生徒にトライしてほしい」という。
23年度は日本大学豊山女子が実施する予定で、今後も増えていきそうだ。「女子は算数が苦手」のイメージも、過去の話になりつつある。
(ライター・柿崎明子)