全国でもっともスキー場の多い長野県。北アルプス広域消防本部では誤通報が多いため、昨年12月16日から記録を取るようにし、今年1月12日までに計104件の通報があったという。

 同消防本部・通信司令室の郷津純治室長はこう話す。

「iPhone14やアップルウォッチの新機種には衝突を検出する機能が備わっているので、当本部の管内にある白馬村や小谷村のスキー場から自動通報されてきています。104件のうち、ほとんどは誤通報とみられます。発信場所を確認すると、スキー場のゲレンデ内からが多く、スキーやスノーボードをされている方からの通報なんです」(郷津室長)

 郷津室長に取材した数時間前にも誤通報があったという。 どういうわけで119番に発信されてしまうのだろうか。

「滑走中にジャンプしたのか、転倒したのか、急激に止まったのかということまでは記録として取ってはおりませんのでわかりません。104件の通報の中で、実際に救急車が出動したのは1件だけですね。それは車同士の衝突事故でした」(同前)

 この交通事故では自動発信が役にたったというが、誤通報の場合は受ける方には戸惑いもある。

「電話を受けると、最初に音声メッセージが流れ、『強い衝撃を受けました』などと言っているから、自動発信なんだなということはすぐにわかります。この機能はせっかくスマートフォン本体に備わっているものですし、うまくいかせば良い機能だと思いますので、消防側からは『切ってくれ』とは言えない」

 困るのは、担当官の呼びかけに沈黙したり、無言で切れてしまう場合だ。

「電話が切れた場合、私どものほうでは、表示された番号に折り返しかけ直して安否確認作業をしています。電話に出ていただけない場合、時間を置いて何度かかけていますので、確認作業に手間どる場合もあります。本当に救急車が必要な方の対応に遅れたら非常に困りますので、誤って119番通報してしまった場合、通信司令室からの呼びかけに、『間違えました』あるいは『何ともないですよ』ということを話していただければ、処理が早く終わりますので、切らずに答えてもらいたいです」(同前)

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