大腸の内側の壁は粘膜でおおわれており、大腸がんはこの粘膜に発生します。発生したがんは大腸の壁の奥深くへと進み、やがて大腸の壁を越えて周囲のリンパ節やほかの臓器、さらにはリンパや血液の流れに乗って離れた臓器へと広がっていきます。

■大腸がんの治療法

 大腸がんの根治治療はがんを切除することが基本で、その方法には、外科手術と、内視鏡を肛門から挿入しておこなう内視鏡治療があります。

 治療を始める前の診断で、がんが粘膜から粘膜の下にある粘膜下層の浅い層にとどまっている早期がんと診断された場合は内視鏡治療の対象となり、それより深くまで浸潤していたり、さらには周囲のリンパ節などに広がっている場合は外科手術となります。

 大腸がんの内視鏡治療を手掛ける大森赤十字病院消化器内科部長(兼)内視鏡部部長の千葉秀幸医師は、こう話します。

「内視鏡治療の機器や処置具の進歩はめざましく、例えば難しいがんを治療する際に安全に切除しやすくするために、病変周囲の粘膜をつり上げたりしながら切除することが可能になっているのです」

 一方で、内視鏡治療を受けても、「後で追加の外科手術を受けることになる場合があることを知っておいてほしい」と強調しています。

「手術前の診断はいわば仮の診断です。内視鏡治療や外科手術で切除したがんを調べることで改めて診断がつくのです。この術後診断で、がんが粘膜下層の浅い層より深くに浸潤している場合は、切除するための追加の外科手術がすすめられることがあります」(千葉医師)

 同じく内視鏡治療の専門家である県立静岡がんセンター内視鏡科副部長の堀田欣一医師は、術後診断を踏まえて次のように述べています。

「大腸がんのなかでも肛門近くに発生した早期がんの場合、がんの切除のために肛門も含めて切除し、人工肛門を造設する場合があります。追加の外科手術でもその可能性がありますが、初めの内視鏡治療で局所のがんを完全に切除しておけば、追加手術の際に肛門を温存し、人工肛門の造設を回避できる可能性があるので、最初の内視鏡治療が無駄にはなりません。そのため、内視鏡治療の対象病変であれば、まずはからだへの負担が比較的少ない内視鏡治療を受けることをおすすめします」

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肛門近くにできた場合、人工肛門の選択がすすめられることも