山本被告は大久保被告から

「合法的に証拠を残さないで、バレないようにする」

 と言われたことを受けて2010年9月8日、淳子被告に

<(靖さんの)抹殺計画を実行に移したい>

 とメールを送った。

 その後、靖さんの殺害を確実にするためのやりとりを続け、11年に入ると、

<今年は大仕事、片付けたらクリスマスや。ははぁ>

 と殺害への意欲を見せ、計画はより具体化していった。

 山本被告と大久保被告が電話やメール、時には直接会って話し合い。それが山本被告から淳子被告にメールで転送され、綿密な計画が練られていく。

 そして、あたかも在宅医療を受けていた患者が亡くなったと見えるように、架空の医療機関のゴム印を偽造して死亡診断書を準備した。

 大久保被告から山本被告には、「フレペン」を用意するようにと指示があった。

 フレペンとは、糖尿病治療に使用されるペン型のインスリン注入器のこと。血糖値をコントロールするために、食事の前後などに自分でインスリンを打つのが一般的だ。

 靖さんは糖尿病を患っていなかった。数値が正常な人が注射を打つと、血糖値が急激に下がり、ぐったりとした状態になるという。

「研修中の病院の内科病棟にフレペンがあるのを見たことがあったけど、当時は小児科担当だったのでフレペンがないことを大久保被告に伝えると、『そんなものも用意できないのか』と怒っていました。結局、大久保被告が適当な処方箋(せん)を自ら書いて、薬局でフレペンを入手しました。それを犯行2日前に、住んでいる仙台から私がいる福島まで届けに来て計画を打ち合わせました。私が父を新幹線に乗せた時にフレペンで3単位を2回に分けて、注射してぐったりさせることになりました。そして、大久保被告が人為的に寿命を断つという計画に……」

 山本被告は、そう説明した。

 11年3月5日の計画決行に備え、山本被告と淳子被告は前日に長野県の病院近くのホテルに宿を取った。翌日、ホテルをチェックアウトする際に大久保被告から連絡があった。

「ブツが手に入った。予定通りに」

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