事業を委託する企業は入札によって選定される。

「どの教科の講座を開設するか、などは予算規模で変わってくるので、現段階では検討中、ということになります」

 進学アシストを受ける生徒や保護者にとって、最大のメリットは金銭的な負担がないことだろう。

 都教委が昨年4月に公表した「都立高校の現状把握に関する調査の結果について」によると、「高校の選択理由」(11年、16年、21年に調査)は、都立高校に在学中・卒業した人は「教育費が負担できる範囲だから」が常に上位に挙がった。

 ちなみに、私立高校の場合、10年以上前から一貫して「大学等の進学に実績があるから」が選択理由の上位である。

■世帯年収増加のからくり

 学力格差は経済格差、といわれる。

 ベネッセ教育総合研究所の「学校外教育活動に関する調査2017」によると、世帯年収によって通塾費用には大きな開きがある。

 1カ月あたりの教室学習活動の費用は、世帯年収400万円未満が3300円。400万~800万円未満が6100円。800万円以上が1万3800円。つまり、年収800万円以上の世帯は、400万円未満の世帯の4倍以上も塾などに通う費用を支出している。

 一方、厚生労働省の「2021(令和3)年 国民生活基礎調査の概況」によると、児童のいる世帯の平均所得金額は、11年は697万円。20年は813万5000円で、16.7%増加している。一見すると、子育て世帯の所得は右肩上がりに増えているかのようだ。

 ところが、である。

 この数字を押し上げているのは、主に世帯所得金額1000万円以上の裕福な家庭だ。その金額の世帯が占める割合は11年に15.6%だったのに対して、21年は24.8%に増加している。

 21年の年収800万円未満の子育て世帯は全体の59%を占める。つまり、この10年で、一部の富める子育て世帯はますます富み、中間層以下の大多数の世帯との二極分化が著しくなっている。

■コロナ禍で何が起こったか

 NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの理事長、大西連さんは子育て世帯の貧困の深刻さが増すのを肌で感じている。

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見えづらい影響が子育て世帯に…