中学受験に向けて、走り続けることに不安を感じ、やめようと考える家庭も多いようです。とくに6年生の夏休みを過ぎたころから、間に合うか不安、成績が伸びないと思い悩むケースが目立つといいます。探求学習の第一人者として知られる矢萩邦彦さんは、編著『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本』(二見書房)を通して、そういった悩みには原因と対策があると説きます。

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■受験をやめようかと思ったら

 中学受験を途中で断念しようか悩む保護者は少なくありません。ベネッセが2012年に行なった「中学受験に関する調査」によれば、中学受験をする6年生の保護者の40パーセント以上が受験をやめさせようと思ったことが何度も、あるいは時々あった、と回答しています。その理由としては、「受験勉強が大変だから」「子どもの成績が伸びないから」の他に、「子どもが疲れやストレスを感じるから」「子どもらしいゆとりある生活を送れないから」「子どもがやる気にならないから」「親子関係が悪化するから」と感じている保護者が実に50パーセントを超えています。にもかかわらず、実際に中学受験を断念するご家庭はほとんどありません。

 6年生の夏休みを過ぎると、焦り始める受験生や保護者からの相談を受ける機会が増えます。特に多く寄せられる悩みは、「ようやく本気になったが、間に合うかどうか不安だ」「夏以降、成績が下がり始めてしまった」というものです。そもそも中学受験自体が適切な選択ではない可能性もあり、続けるかどうかを改めて熟慮判断する必要がありますが、続けるのであれば最適な方法で臨みたいところです。これらの問題に共通する原因と対策について考えてみたいと思います。

 まず、この時期いちばん苦労するのが、「すぐに忘れてしまう」タイプの受験生です。原因はほとんどの場合、しっかり理解せずにただ暗記しているか、繰り返すモチベーションがないことだと言えます。6年生の夏休みくらいまでは、塾のテストには直前に習ったことが出題されます。範囲が決まっているテストは対策がしやすいのですが、理解していなくてもある程度点数が取れてしまうという問題もあります。特に要領のいい受験生は、授業中もそつなくこなしテストもなんとなく点数が取れてしまうので、塾でも家庭でも定着していないことが見過ごされがちです。

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矢萩邦彦
中学受験塾塾長 矢萩邦彦

やはぎ・くにひこ/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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