複数の採点ミスの発覚に、平均点に関する疑念──。今年度導入された英語スピーキングテストは、都立高入試の合格発表を控えるいまも反対運動が続いている。なぜ次々に疑念が生まれるのか。
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音漏れに、前半組の解答の声が後半組に聞こえる会場設計の不備、学習指導要領からの逸脱、不受験者に仮得点が与えられることで起こる「逆転現象」など、数々の問題点が指摘されてきた英語スピーキングテスト「ESAT-J」。都立高校入試の一部として、昨年11月に初めて行われたこのテストは、東京都教育委員会(都教委)が事業者と共同実施。タブレットを用いて受験生の解答音声を録音し、フィリピンで採点する方式で行われた。その結果は、3月に合格発表を控える都立高校入試の総合得点の一部として利用される。1月にスピーキングテストの結果が返却された後にも、新たな問題が浮上した。誤って低く採点された受験生が8人いたというのだ。
複数の採点者が気づかないなんて
都教委はトラブルの原因を、「8人の解答音声データの一部に、一定の機械音のみが録音され、解答音声が確認できない箇所があることが判明した」とする。京都工芸繊維大学でコンピューターを使ったスピーキングテストを開発・運営してきた同大名誉教授の羽藤由美氏は、今回のトラブルについてこう話す。
「これは『解答音声の回収トラブル』と呼ばれるものです。回収できない理由はさまざまですが、通常はいくつものケースを想定し、システムを構築します」
都教育庁の瀧沢佳宏指導推進担当部長は都議会文教委員会での答弁で、「(最初に)機械で波形をチェックし『無音』の場合はバックアップファイルで採点したが、『音が録音されている』ものに関しては確認をしなかった」としている。
羽藤氏は言う。
「機械音などの雑音が入るのは、当然想定しておくべきトラブル。録音された解答音声が極端に小さいことなどもあります。『無音』のケースしか想定していなかったことが信じられません」