「私はあまり急いで反撃能力を高める必要はないと思っています。結局、日本の抑止力は、米軍なんです。敵国に対して、米軍が10倍返しをするぞ、と脅せば引っ込むんです。ただし、日本国憲法において、自衛隊は米軍と同一の指揮系統では行動できない。作戦目標を共有したり、その作戦を実行する時期を調整したりはするものの、自衛隊は自衛隊で、米軍は米軍で別個に行動します。なので、常態として共に戦闘機を飛ばし、共に反撃するということにはならないわけです。だからこそ、今の憲法解釈でどこまで、何ができるかは別途クリアする必要があると思います。日米で指揮系統は別々だとしても、意思決定は一つにできる共同司令部のような組織は作っておかないと、実戦で役には立たない可能性があります」
では、43兆円もの防衛費の使い道として、本当に“実戦”で役に立つ装備とは何なのか。元自衛官の立場から、香田氏に具体例を挙げてもらった。
「まず航空自衛隊でいえば、F15戦闘機をこの先も使っていこうとしているが、米軍はF15を嘉手納基地から順次退役させるということを決めています。その替わりにF22ステルス戦闘機を暫定配備するようですが、F22ですら古くなりつつあります。これからは最新鋭のステルス戦闘機のF35を増やしていくべきでしょう。問題は追加導入数とそのスピードです。あと、エーワックス(AWACS)と言われる早期警戒管制機も必要です。ロシアのウクライナ侵攻でも顕著ですが、山の上にあるレーダーサイトは真っ先に攻撃を受けて破壊されます。日本には数十カ所のレーダーサイトがありますが、それが破壊されると、次の瞬間からレーダー情報が取れなくなるので致命的です。『エーワックス』は、空中を飛びながら警戒空域に侵入する敵機を機上のレーダーで捕捉できます。山の上にある固定のレーダーサイトとその指揮管制は副次的なものにし、エーワックスを主にするというような手当も必要です。」