「最初のうちは、ドクターが腟口に触れるだけで『キャーッ』と声を上げてしまうほど。でも、自宅でもダイレーターを挿入する練習を行ううちに、少しずつ腟口が拡張され、挿入することに慣れていきます」(池下先生)

 5本中4番目のサイズを使えるようになったら、ペニスの挿入をイメージした練習を始める。その際、ドクターがダイレーターを手に持って、夫役を務める。女性はドクターと向き合う態勢をとり、少しずつダイレーターを挿入する。

「イメージトレーニングをすることにより、腟の位置を自分で把握し、挿入の方向を体で覚えることができます。座位の姿勢は女性が自分でコントロールしやすいんです。脱力を心がけ、自分のペースでゆっくりと行います」(池下先生)

■夫とセックスできるようになるまで、もうひと息!


 自宅で練習する際、妻がダイレーターを挿入するトレーニングの様子を夫に見せてあげる。

「『腟の場所がわからない』という男性が少なくないので、『腟の入口はここ。ここから挿入する』と教えてあげます」(池下先生)

 そして次の段階で、夫にダイレーターを挿入してもらう。ダイレーターを妻の腟内に挿入する方向や、出したり入れたりの力の加減を練習すると、実際のセックスにつながりやすいのだ。

「童貞の方は、自分で挿入することができずにいるため、まずはダイレーターを疑似ペニスに見立てて、パートナーである女性の体を支えてあげながら、挿入の方向を練習してもらいます。夫側がダイレーターの挿入に慣れてきたら、実際に、ペニスの挿入にチャレンジしてみてもいいでしょう」(池下先生)

 最後に「痛くないセックス」のための大切なポイントを池下先生から伝授してもらった。

「性交時の痛みがイヤだから、セックスしたくない」という人の場合、多くは、挿入時に腟口の両脇にある小陰唇・大陰唇というヒダを巻き込んでしまっているのが原因だという。

「私は日ごろから、挿入前に『がま口を開けるように、腟の両脇のひだをしっかりと開いて』と患者さんたちに伝えています。大陰唇・小陰唇を巻き込まれなければ、痛みが軽減すると思いますよ。パートナーにもぜひ伝えてあげてください」。(池下先生)

 また、もう一つ重要なのは、肩やひざなど全身の力を抜いて脱力すること。体に力が入ってしまうと腟の筋肉にも力が入り、挿入時にダイレーターやペニスを押し返してしまって痛み出やすくなる。フーっと息を吐いて、脱力を心がけることが肝心だ。

「性の問題というのは、目を背けてやり過ごすことができません。片方だけが悩む問題ではなく、夫婦やパートナーと話し合っていかなくては。挿入することだけにとらわれずに、2人で手をつないで散歩したり、ハグしたり、キスしたり。セックスって、お互いを大切に思う気持ちの延長線上にあるものだと思うので、スキンシップを通して幸福感を感じる時間を大切にしてほしいですね」(池下先生)

 未完成婚を克服するには、女性の体と心について精通している専門医のレクチャー、そして、マンツーマンのトレーニングが欠かせない。困ったときには夫婦2人だけで抱え込まず、医療機関に相談してみよう。(取材・文 スローマリッジ取材班 大石久恵)