「かつては子どもがいなくても、仕事をして収入を得て、ファッショナブルなのが<いい女>という風潮がありました。でも、今は『子どもがいても素敵なママでいたい』と、子どもを持つことが女性たちのライフスタイルの一部となってきました。未完成婚の女性たちも、『女であることの証は子どもを宿すこと。お金や地位より、最終的には子どもがほしい。妊娠・出産にいたるためにもセックスできるようになりたい!』と思うようになったのです」と池下先生。

 未完成婚の相談にやってくる女性たちによれば、そもそも男性側が「ペニスを挿入するべき腟の入口がどこにあるのかわからない」ケースが少なくないという。どちらか一方に性経験があれば、リードしてもらいながら初体験を難無く通過できるのだが、処女と童貞のカップルゆえに、なかなか先に進めないのだ。

「性の営みは太古の昔から行われ、自然とできるようになるんじゃないの?と思われてしまいがちです。でも、現に『結婚後もできない状態が続いている』という人たちがいるわけです。実は近年、母親の過干渉によって、思春期にマスターベーションを経験せずに大人になってしまった男性が少なくありません。『床オナ』といって、フローリングの床など硬いものでペニスを刺激しなければ射精できず、生身の女性とセックスすることに消極的な男性も増えているようです。そうした影響も影を落としているのかもしれませんね」(池下先生)

 また、もう一つのケースとして多いのが、「処女ではないけれど、性交痛があってセックスが苦痛」という人たちだ。

 製造業で課長に就任したばかりの40歳のB子さんは、5歳年上の夫と結婚して2年目。結婚前に3歳年上の元カレと数回のセックス経験があったが、最後まで挿入できたかどうか、実感がない。「セックスはただ痛いだけ。どこがいいのかわからない」という。「違うパートナーと結婚すれば痛くなくなるのかな?」と思っていたが、やはり痛くて、最後まで挿入したことがない。「夫は無理強いすることなく、待ってくれている。とはいえ出産のタイムリミットも迫っているし、女性に生まれたからには子どもを産みたい」と、切実な思いをドクターに訴える。「妊活のためにセックスレスを克服したい」という思いは、前述のA子さんと同様といえるだろう。

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医療器具で練習