1月11日、台湾軍が「春節」控え軍事演習(写真/アフロ)
1月11日、台湾軍が「春節」控え軍事演習(写真/アフロ)

 人民解放軍は湾岸戦争やイラク戦争などから教訓を学びつつ、軍の近代化を進めてきた。そして今、習近平政権は情報化戦争や、AIを駆使した“智能化戦争”への準備を推し進めている。

「中国人、そして人民解放軍が自信をつけてきたなかで、中国の核心的利益であり、まだ解放していない台湾に目が向くのは当然の帰結なわけです」

 さらに中国は、台湾人に台湾アイデンティティーが根づいてしまったことへの危機感を募らせている。

「端的に言うと、台湾の与党、民進党は台湾土着の政党であり、大陸に対する思い入れがありません。そんな政党が16年以降、政権を担ってきた。今の香港の状況を見ている多くの台湾人は到底、中国とは一緒になれないと考えている。このままいくと台湾人の気持ちは大陸からますます離れていく。中国からすれば、武力による統一という選択肢がクローズアップされてくる」

 期を同じくして米中関係は新冷戦といわれる状況に陥っている。関係改善の糸口は見えない。

「米中関係の悪化にともない、トランプ政権以降は特にそうですが、米国と台湾の関係が非常に強化されています。政治家の往来や武器の供与などに見られるように、米国の台湾支持が顕著になっている」

■中立化で日本は苦境に陥る

 話を机上演習に戻そう。

 演習は計24通りのシナリオで行われたが、もっとも悲観的なシミュレーションは、日本は中立の立場をとり、台湾を救援するための基地使用を米軍に認めない、というものだ。

「その場合、台湾と米軍はかなり悲惨な状況に陥ることが報告書に示されています。一方、中国とやり合わない日本の安全は確保されます。しかし、その場合、台湾は日本にとって友人であり続けてくれるでしょうか。絶対にならないどころか、場合によっては侵攻してきた中国よりも憎い存在になるでしょう。友人だと思っていた日本が台湾を見捨てた、という話になるわけですから。また、アメリカとの同盟関係も深刻な打撃を受ける可能性もあると思われます」

 中国との関係はどうだろうか?

「日本が中立の立場をとれば、中国との関係が破滅的になることは一時的に回避されるでしょう。しかし、それは日中関係の蜜月を長期にわたって保証するものにはなりません。いずれは日本に対する圧力をかけてくると思われます」

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台湾有事を抑止する2つの策