同じく元鹿島で、2019年7月にスペインに渡ったMF安部裕葵(バルセロナB)も、今夏が国内復帰を決断するひとつのタイミングになる。日本人選手がブラウグラーナのユニフォームに袖を通した“衝撃”はあったが、度重なる故障もあってBチームからのステップアップは果たせず。同時期にレアル・マドリードと契約した久保建英の現在とは対照的に“忘れられた存在”になっている。だが、選手としての才能に疑いの余地はなく、高い俊敏性を生かした鋭いドリブル突破は誰もができるものではない。まだ24歳になったばかり。現契約は2023年6月まで。スペインでの4年間は、現時点では「失敗」だったが、まだ取り返す時間と方法はある。国内復帰ならば古巣・鹿島が第一候補。自身の再起へ向けてどのような決断を下すのか、注目が集まる。

 この数カ月の間に状況が一変したのが、31歳のMF森岡亮太(シャルルロワ)である。神戸から2016年1月に24歳で海を渡って以降、ポーランドを経て長くベルギーで活躍を続けてきたゲームメーカー。正確かつ意表を突くパスと非凡な得点センスで、昨季はリーグ戦30試合で4得点10アシスト、プレーオフでも6試合4アシストと攻撃の中心として存在感を見せていた。そして今季も開幕から14試合終了時点で10試合にスタメン出場していたが、チームの成績が低迷して監督が解任されると一気に序列が低下。新体制の下でリーグ戦10試合を戦っているが、スタメン出場は1試合(12月26日のアンデルレヒト戦)のみ。直近2月5日のメヘレン戦はベンチ外となった。シャルルロワとの契約は2024年6月まで残っているが、退団の可能性が急浮上している。今冬にはJ2・長崎がオファーを出したとも噂されたが、国内復帰なら古巣の神戸が最優先。イニエスタの後釜として迎え入れる段取りを進めるべきだ。

 昨年7月から1年間のレンタル移籍でポルトガルに渡ったDF小川諒也(ヴィトーリア)も苦しい状況が続いている。ダイナミックな攻め上がりと高精度の左足クロスを武器に日本代表にも招集されたこともある左サイドバックだが、今季ここまでリーグ戦19試合中、出場6試合(スタメン2試合)のみ。「ポルトガルのサッカーに適応できていない」との現地報道もあり、昨年11月13日の第13節以降は7試合出番なし(ベンチ入り4試合、ベンチ外3試合)とほぼ構想外となっている。日本を発つ際には「(他の海外日本人選手たちと同様に)自分も海外に行って、新しいサッカーを学びたい」と海外挑戦の理由を話したが、満足にピッチに立てない環境下では得るものは少ない。レンタル期間が終了する今年6月での退団は確実。欧州でのステップアップは厳しく、保有権を持つFC東京への復帰が既定路線だ。

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