――荻上さんが宗教2世に投げかけた質問項目に「体罰」「恋愛・交友制限」「学業・就業制限」などがあります。親が子どもたちの生活を枠にはめて、そこからはみ出した際に体罰を与えたりするわけですが、宗教2世問題は、いわゆる「毒親問題」にも見えます。

菊池 それぞれの問題を円に描くと、宗教2世問題の円と、毒親問題の円はある程度は重なっていると思います。でも、宗教2世問題=毒親問題ではありません。だって、親はその教義を受けなかったら、自分の子どもをむちで打たなかったわけですから。親のパーソナリティーの問題ではないんです。カルト的な教えが正しいと思い込まされた親が、子どもによかれと思って行った行為が虐待になっている。むろん、教団としては毒親問題にしたいわけです。うちの宗教がおかしいんじゃなくて、信者の親が勝手にやったことだと。

荻上 宗教2世問題のなかには毒親問題となりうるケースもありますが、「宗教2世問題=毒親問題ではない」と何重にも強調していくことが大切だと思います。子どもの目線から見れば、親の教育方針に影響を与える、信者コミュニティーの存在があります。そのなかで虐待行為が教唆、推奨されたり、教団奉仕への同調圧力が働いたりする。当事者が振り返ると、「あれは毒親というより、毒コミュニティーであったなあ」と映る場合もあるでしょう。「毒」という言葉は、他者が一方的に使うことは相当の慎重さが必要ですが、自らの体験の振り返りのなかで、当事者が整理するための概念としては否定できません。各団体は、信者の子どもたちにとって、精神的健康を奪う活動になっていないか、自主的な点検をしてほしいと思います。

■各教団の特徴は

――荻上さんの著書は、宗教2世に対して行った調査がベースになっていますが、調査を始めた動機について、教えてください。

荻上チキさん
荻上チキさん

荻上 私はもともと福祉について関心があり、取材をして本を書くなどの評論家活動をしてきました。その一環として一昨年、「社会調査支援機構チキラボ」という団体を立ち上げました。当初は性的暴行被害者やストーカー被害、学校の校則や各種ハラスメントなどについての調査や広報活動を行ってきました。事件が起き、宗教2世の問題が表面化したときも、「児童福祉」の観点からの見落としに気づきました。信仰がある人への合理的配慮の議論はしてきましたが、「信じない自由」の議論が不十分であったと思いました。そんなとき、この本の担当者が宗教2世で、ほかの当事者の実態をぜひ知りたいという要望がありました。調査は、そのタイミングでしかできないものがあります。政策ニーズも含めて把握する必要があると思い、急いで行いました。

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