――旧統一教会に対する取材の過程で、信者が抱える問題に関する論文に目を通してきました。しかし、荻上さんの調査のように、具体的な宗教団体名が挙げられているものはほとんどなく、問題の実態がいま一つ伝わってきませんでした。

荻上 今回の調査では創価学会、エホバの証人、旧統一教会、この三つの教団2世が上位回答者であったので、教団ごとに異なる風土があることを可視化するために比較しています。

菊池 思っていた以上に宗教の違いによって特徴が出ていると感じました。それが具体的な数字で示されています。

荻上 例えば、エホバの証人の宗教2世は「信仰を理由とした体罰」の体験率や「勧誘活動の要求頻度」が高い。創価学会は「政治活動への関与要求頻度」の高さが目立ちます。旧統一教会は「献金」の要求と「身体を酷使する修行の要求」が他の教団に比べて高かったです。

――調査報告書について、教団から抗議はありましたか?

荻上 現時点ではありません。報告書については法的なリスクを考えて、公表する前に弁護士にチェックしてもらいました。ここに示されていることは調査で判明した事実ですから「真実相当性」があります。虐待と認識される行為を受けた宗教2世が、現に存在していることを伝える、という「公益性」もあります。もし、不当な嫌がらせを受けたら公表するつもりです。

――菊池さんの場合は、当初は別の出版社のWebで連載していたのが、宗教団体からの抗議によって公開停止になったそうですが。

菊池真理子さん
菊池真理子さん

菊池 公開停止となったきっかけは、ある教団からの、漫画に書いた価格などについて事実と異なる部分がいくつかあった、といった抗議のようでした。Webなので、すぐに修正が可能ですから「すぐに描き直します」と担当さんに言いました。ところが、「そういうことではなさそうです」と返事がありました。

――何が問題だったのでしょう?

菊池 後で知ったのですが、教団から届いた文書のなかに、「信者の感情を傷つけた」といった内容が書かれていたそうです。私としては、だからといって2世が傷ついている事実をなかったことにしていいわけではない、きちんと伝えるべきだと思い、作品を描きました。

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「信者が傷つく」を隠れ蓑にしている