さらに今回の承認で、オラパリブ+ベバシズマブという組み合わせも可能になった。
PARP阻害薬は、がん細胞の傷を修復する作用を持つ酵素PARPを働かなくすることで、がん細胞の死滅を促す。初回治療の維持療法として、DNAの傷を修復して細胞のがん化を抑える働きに異常のある状態(HRD陽性)や、HRDに関わるBRCA遺伝子に変異のある場合に使えるのがオラパリブで、遺伝子の状態にかかわらず使えるのがニラパリブだ。
「臨床試験の結果と同様、実際に臨床の場で患者さんに使っても、格段に違う。予後の改善が得られています。今はどちらの薬をどういう患者さんに使えばいいのか、各病院の考え方に基づいて用いている状況ですが、今後はそのあたりの整理が必要になってくるでしょう」(新倉医師)
実はもう一つ、新倉医師が選択肢と挙げる薬物療法がある。それがドース・デンスTC療法というものだ。
「TC療法と同じ抗がん薬を用いますが、パクリタキセルの1回の投与量を減らし回数を増やして使うもので、こまめに薬を入れるメリットが大きい。実際、国内の臨床試験では通常のTC療法より高い有効性(生存率の向上)が認められており、日本人においてはTC療法+ベバシズマブと同等の有効性の可能性があります」
分子標的薬のベバシズマブでは消化管穿孔(せんこう、穴があくこと)、血栓症、高血圧などの副作用がある。そのため、いわゆる血液サラサラ系の薬(抗凝固薬など)を使っている場合や高血圧や糖尿病などがある人への投与には注意が必要とされている。
「こうしたベバシズマブの副作用が危惧される患者さんには、ドース・デンスTC療法という考え方もあるでしょう。また、術前化学療法でドース・デンスTC療法をおこなうという選択肢もあると考えています」(新倉医師)
さらに世界レベルでの臨床試験や研究で、さまざまな治療の標的となる遺伝子が発見されているという卵巣がん。それに対応する分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が登場する可能性も出てきている。新倉医師はそうした期待も込めて、こう話す。