「センターを立ち上げたとき、複数の企業から計250万円ほどをご寄付いただきました。でも、業績が悪いときに無理に寄付をお願いすることはできません。安定的な財源確保のためには、ふるさと納税の制度を使わせていただけないか、と思いました。当然、佐世保市から信頼が得られないとだめですから、何か地域に役立つことはできないか、市役所に『御用聞き』に通うことから始めた。地域連携を掲げるEDGEは、市の要望に対して結果を出してきました。そして今年度、市と連携した『ふるさと納税を活用した寄付活動』が実現しました」
入江准教授はEDGE活動が軌道に乗った理由として、校長や教員の応援のみならず、企業や自治体からの支援があったことを挙げる。
「全国各地の高専にはアントレプレナーシップ教育に力を入れる先生がいます。でも、先生個人の熱意に依存しているのが現状です。それをサポートする仕組みをつくらないと、なかなか長続きしないでしょう」
今後、全国の高専に「起業家工房」が整備されるわけだが、重要なのはそれを継続的に運用する人材と資金の確保である。それなしには単なる設備の整った工作室で終わってしまいかねない。
「人と人がつながり、いろいろなものが生まれていく。起業家工房を活用するにはゼロからビジネスを立ち上げるのと同じことをやらなければならない」と、入江准教授は言う。
起業家工房が新たな「もの」や「こと」を生み出す高専生のコミュニティーの場になるのか、5年後には結果が出るだろう。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)