プロコンゼミの指導教員、山下晃弘准教授が「ここがすべての出発点だった」と語るのは、同校の「組み込みシステム開発マイスター(以下、組み込みマイスター)」制度だ。

「高専に入ってくる学生は、何かものをつくりたい、それを動かしたいっていう気持ちがすごくある。ところが、いざ高専に来てみると、そういう授業ってあまりないんですよ。それに対して、『組み込みマイスター』は学科や学年を超えて学生たちが集まって、わいわいがやがや、思い思いにものづくりに打ち込める場なんです。そこでいいアイデアが出たり、いいチームができたりしたら、ちょっとコンテストに出してみようか、みたいな感じで引っ張り上げる」(山下准教授)

 この課外活動は08年度、文科省の「質の高い大学教育推進プログラム」(高専も含まれる)に選定された「組み込みシステム開発マイスターの育成教育」事業として基盤がつくられ、事業終了後も継続された。

「この取り組みで面白いのは、教員が何かを教えたりすることは一切ないんですよ。すべて、高学年の学生が低学年の学生に教える、というスタンスをとっています。活躍する先輩の姿を見て、後輩が育っていく。で、何か必要なものがあれば買うよとか、場所を確保するよとか、学校が環境づくりをする。その流れでできた作品をDCONに持っていったら優勝した、ということです」(山下准教授)

起業したほうが間違いなく得

 ちなみに、高専生が参加するコンテストというと、「高専ロボコン(アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト)」が有名だが、DCONとはどのようなコンテストなのか?

「ロボコンは機械系のコンテストなので、基本的に性能の数字の戦いですが、DCONは、『どれだけ価値があるか』を競う大会です。参加者はプログラムを使ってものをつくるんですが、同時にそれをどうビジネスにするか、プレゼンする。それに対して審査員を務めるプロの投資家が『これはいいね。何億円の価値がある』と評価する。単に技術がよくてもだめで、企業にしたときの価値が見られる。私たちの場合、『5億円』というスコアがついて優勝しました。さらに副賞100万円で会社をつくれますよ、と。そんなコンテストです」

 こう説明するのは、DCON優勝をきっかけに、東京高専在学中にベンチャー企業「TAKAO AI」を設立した板橋竜太代表だ。

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あいつが賞をとったのなら…