東京都心の地下には大量の天然ガスが眠っていることをご存じだろうか。日本有数のガス田、「南関東ガス田」である。この天然ガスを主体とした都市ガスを家庭用向けに多く販売しているのが千葉県茂原市に本社を置く「大多喜ガス」だ。「資源価格の高騰や円安の影響を受けない、家計にやさしい国産ガス」を供給していると、最近、大多喜ガスはさまざまなメディアで取り上げられてきた。ところが、AERA dot.が同社を取材すると、担当者は困惑の声を漏らした。
* * *
この1年、大手都市ガスの料金は大幅に値上げされ、家計を直撃している。背景にあるのは海外から輸入する液化天然ガス(LNG)の高騰や円安の影響だ。一方、主に国産ガスを供給する大多喜ガスは家庭用ガス料金を据え置いてきた。
ところが、である。
「この件につきましては、他のメディアの方にも伝えてきましたが、誤解されている場合もありまして……」
と、大多喜ガス総務グループの木村和彦マネジャーは言い、こう続けた。
「弊社のガス販売価格は、こちらをはじめとした天然ガス生産会社のかなりの努力もあって維持できています」
木村さんの言葉を継いだのは、隣に座る関東天然瓦斯開発・管理部総務グループの千代秀樹マネジャーだ。
「最近、天然ガスの生産コストは上がっていますが、その上昇分を吸収するさまざまな努力を行ってきました」
大多喜ガスと関東天然瓦斯開発はともにK&Oエナジーグループの傘下にあり、両社の本社は道を隔てて隣接している。
生産コスト上昇の理由
2人が強調したのは、今後、企業努力だけでは吸収できないコストが発生した場合、家庭用ガス料金を値上げせざるを得ないことだった。
「各メディアの『これから先のガス料金はどうなりますか?』という質問に対して、『現時点では先行きのことはわかりません』と、回答してきました。ところが、これまでのガス料金の推移から『料金は変わらない』というニュアンスで報道されたこともありました」(木村さん)
もし将来、大多喜ガスが家庭用ガス料金を値上げした場合、「資源価格の高騰や円安の影響を受けないのでガス料金は変わらない」との報道を見た契約者は首をかしげてしまうだろう。